2024年10月26日から27日にかけて、シーズン終わりの常念岳を登ってきました。元々日帰りの計画でしたが、林道崩落による行程加算が予想以上だったので、リスクを回避するために小屋泊へ切り替えました。林道崩落は考慮していたのですが、バスで到着する場所がタクシー降車位置よりかなり手前で、50分ほど余分に掛かる見込みです。ぎりぎり間に合いそうでしたが、日の短さも考えてリスクを取らない判断を下しました。今回の山行記録なら結果的に間に合ったと思われますが、ほぼ無風で気温も適温という好条件だったこともあり、日帰りはやや危ない橋と思われます。
往路は夜行バスで移動します。いつもの竹橋に向かいファミマで買い出しを済ませて、23時に出発します。談合坂SAと諏訪湖SAで休憩を挟みます。諏訪湖SAでは口寂しかったので、くるみやまびこを買い食いして小腹を満たします。それから4時15分ごろ鳥川渓谷緑地駐車場に到着しました。バスは混んでいましたがここで降りる他の人はおらず、大半が燕岳へ向かうようです。
真っ暗な中、山行準備を済ませます。トイレがあるのでそこで灯りを確保出来ますが、いずれにせよこの先ヘッデンが必要なので、ヘッデンを付けて準備しました。準備を終えたら歩き始めます。本当に真っ暗でヘッデンがなければまるで道が見えない状況です。思ったほど寒くないのが救いですが、何も景色が見えない中を1時間半ほど歩くのは修行ですね。崩落地点の手前が広場になっており、ここに仮設トイレがありますので用を済ませておきます。この先の登山口にもトイレはあるのですが閉鎖されていて使えません。崩落地点から40分ほど歩いて、一の沢登山口に着きました。
登山口に着いた頃には多少空も明るくなってきました。ベンチに腰かけて朝食のおにぎりをいただきます。それから山行を開始しました。無風で寒さもなく登山指数はAですが、空には雲が多くて曇天となりそうです。傾斜が緩やかですが、岩が多くて少し歩きにくいです。
10分ほど歩くと山の神に出合います。こちらで安全登山を祈願しました。途中古池を観賞しつつ、沢に沿って登っていきます。沢を左手に望みつつ、時折一の沢へ流れ込む沢筋を渡渉しながら進みます。
45分ほど歩いて、大滝に出合います。こちら地図では王滝と表記されていますが、案内標では大滝と表記されています。どちらが正しいのか分かりませんでしたが、漢字の意味が大きく違うので、元はどちらか正しい方があるのだと思います。ちなみにどの滝のことを指しているかは、分かりませんでした。
大滝まではだいぶ平坦な道でしたが、大滝の先は少し傾斜が出てきます。特に大滝を過ぎて5分ほど歩いたところで急坂が現れます。結構ザレていて登りにくく思わず身構えてしまいますが、区間はかなり短いです。その後は涸れ沢に沿って歩きます。ルート取りは自由ですが、変なルートを選ぶと地味に大変になるので、気を付けた方が良いです。
途中で涸れ沢を抜けますが、涸れ沢に気を取られていると見過ごすリスクがあります。一応階段があるので、気づきやすいとは思いますが。ちなみにこの階段が何故か結構斜めに掛かっているので、平衡感覚がバグります。
紅葉シーズンは終盤を迎えておりあまり期待はしていませんでしたが、それでも時折鮮やかな紅葉を見せてくれる木々があります。道は徐々に勾配を増していきますが、そこまできつくありません。ここまで来ると時折一の沢を左右に渡渉するシーンが出てきます。水量次第でしょうが、この日は足を水に浸けることなく渡れました。
後ろを振り返ると、雲海が広がる様子を望めます。最初は木々越しでしたが、高度が上がってくるとどんどんきれいに望めるようになります。登る度にベストショットが更新されていきます。
そしてついに胸突八丁が登場です。まずは階段をしばらく登っていきます。山麓の開けた様子や谷筋に落ち込む様子など、適度な高度感が気持ちいいです。胸突八丁の名前の通り、これまでの道に比べて急勾配となり息も上がります。途中小腹が空いたので、カロリーメイトを補給しました。
やがて最終水場に出合いますので、こちらでほぼ空になったペットボトルに水を汲んでおきます。ここから少し進むと、登山道が崩れた土砂に覆われている箇所があります。左手は切れ落ちており、乗り越える時に滑落しないか、少し怖かったです。
常念乗越に向けて、第1ベンチから第3ベンチまでが数百メートルおきに置かれていますが、登りでは次のベンチが見えるまで随分長く感じましたね。第3ベンチを越えると眼前に常念岳が見えてきます。ただこの位置からだと山頂は見えません。
程なくして常念乗越に着きました。岩が転がる広大な広場になっています。左手に常念岳、右手に横通岳が鎮座しており、正面に進むと常念小屋があります。10時前でしたのでさすがにチェックインはできないと考え、椅子に腰かけて休憩します。正面に見える槍ヶ岳の存在感が圧倒的ですね。
しばらく休んだ後、アタックザックの準備をして、メインザックは常念乗越にデポして、常念岳山頂へ向かいます。最初は九十九折に登っていきます。ガレ場ですが登山道が整備されていますので、そこを歩けば岩を越えずに済みます。そんな中、右手を望むと北アルプスらしい雄大なカールが広がっています。道中ではイワヒバリを見かけました。そしてこれまで出合えていないライチョウがいないか、意識しながら探しましたが、結局出合えませんでした。頭がライチョウのことで一杯になっていると、何でもない白黒の岩さえもライチョウに見えてきてしまいます。
しばらく登ると、常念乗越から見えていたてっぺんに辿り着きます。実はこちらは山頂ではなく、ここからさらに奥に見えるのが山頂になります。もうひと踏ん張りして登ります。
やがて三俣からの登山道と合流する地点が見えてきました。一の沢から登ってくる人は少数派のようで、常念乗越まで誰一人抜かれることなく、そして追い越されることもなかったのですが、三俣からやってくる登山者の姿はそれなりに見かけました。自家用車がある方は三俣に行くでしょうね。鳥川渓谷緑地駐車場は登山者の利用禁止ですし。自分は公共交通機関勢なので、登山道の難易度が低い一の沢ルートを選びました。
合流地点からもうひと登りすると、標高2,857メートルの山頂に到着です。山頂には諏訪大明神と山ノ神を祀る祠がありますので、お参りします。その後は適当な岩の上に腰を掛けて大休止です。
青空は見えない曇天ですが視界は明瞭で、北アルプスの山々やその奥にある山塊も360度見渡すことができます。思わずパノラマモードで撮影をしてしまいました。小屋泊することで時間にだいぶ余裕があることから、おにぎりを食べながら、だいぶのんびりと過ごします。時間に余裕があるので前常念岳まで行くことも考えましたが、やや行程が忙しなくなるかな、と思い止めました。
同じルートで常念乗越まで下ります。正面に見える横通岳が迫力満点です。望遠端で人を入れて撮ることで、山のスケール感が伝わる写真を撮れました。
14時すぎに常念乗越へ着きました。デポしたメインザックを回収したら、常念小屋にチェックインします。シーズン終わりということで、4つの布団がある部屋を2名使用でした。後で会話しましたが、3年ほどで百名山を80座ほど踏破しており、羨ましいペースです。
しばらく寛いだ後は、コーラを買って外で景色を眺めながら一服します。徐々に雲が晴れていき、青空が覗いてきました。夕方ごろには日も差して、すっかり良い景色が広がっています。西の低い空は雲が多くて、夕日はあまりきれいに見えませんでしたが、それなりに染まる様子を楽しめました。
それから夕食をいただきます。メインディッシュはハンバーグで、せっかくなので生ビールも注文しました。
その後は外へ出て、星空を観望します。肉眼で見ると満天の星空で天の川もうっすらと見えました。撮影した写真を後で確認したところ、そこそこ薄雲は出ていたみたいです。それでも紫金山アトラス彗星を撮影できました。部屋に戻った後は、19時過ぎに就寝しました。
翌朝、5時手前に起床して朝食をいただきます。それから外へ出て御来光を待機します。さすがに日の出前は冷えますね。前日に比べて若干風も出ているので体が冷えます。フードなしのダウンジャケットは、やはり首元から体温が奪われてしまいます。徐々に東の空が赤く染まり、マジックアワーの景色が広がります。6時すぎ、太陽が頭を出しました。そこからみるみると顔を出して雲海を赤く染めます。それから振り向いて、槍ヶ岳を含む山々のモルゲンロートを期待しましたが、思ったほど赤くは染まりませんでした。単に日が差す以外の条件もあるのでしょうね。
6時45分ごろ、下山開始です。一の沢登山口まで下りてしまうと携帯の電波が入らなくなるので、この時点でタクシー会社に電話して、タクシーを予約しておきます。
一の沢ルートの下山はかなり楽です。序盤は勾配が急ですが、程なくして緩やかになるので、膝への負担も少ないです。前日とは違い晴れているので、見える景色の印象も変化があって楽しめます。そして人が少ないのも快適で良いですね。本来なら人気ルートですが、林道崩落の影響で利用する人はだいぶ少なくなっているようです。
大滝を越えた先では、野鳥によく出合えました。ルリビタキ、コゲラ、エナガを撮影することができました。声はすれども姿は見えず、ということが多いので、これだけ写真に収められて嬉しいです。マイクロフォーサーズの望遠端100mmなので、頑張っている方だと思います。
9時30分すぎ、登山口まで下りてきました。ここから30分ほど林道を歩いて、タクシープールに到着です。10時に予約して、ほぼ10時ジャストに到着できて、我ながら正確な見積りです。この日は昼ごろから天気が崩れる予報でしたが、山行中は快晴に恵まれて良かったです。
その後は穂高駅まで向かい、そこから松本駅まで移動して、榑木野駅舎店にて大海老天ざるそばをいただきます。お酒は北光正宗を頼みました。予報通り、昼に近づくと雲が増えてきましたね。
それから駅売店で水飴をお土産に購入して、13時ごろ発のあずさに乗って帰路につきました。普通車は混んでいそうでしたので、グリーン車課金しました。
今回の山行データは以下の通りです。
日程 | 2024/10/26-2024/10/27 |
距離 | 22.86km |
歩行時間 | 11:02:30 |
経過時間 | 29:34:06 |
高度上昇 | 2,005m |
高度下降 | 1,875m |
平均心拍数 | 116bpm |
常念岳を一の沢ルートで登りました。本来一番メジャーなルートですが、8月に発生した林道崩落の影響で長い林道歩きが必要となり、利用者が減っています。当初は日帰りのつもりで往路だけ夜行バスを使い、帰りはタクシーと電車で帰る計画を立てていました。山行時間がそれなりに長いので、日帰りのバス往復の設定はないのです。しかし冒頭に書いた通り、行程が予定以上に伸びそうでしたので、小屋泊に切り替えました。
当日は曇天ながら無風で気温も暖かく、登りやすかったです。前週の苗場山がかなり寒かったので、起毛タイツにニット帽と、かなりの防寒装備で来てしまいましたが、やや暑さを感じる場面もありました。林道崩落の影響か、一の沢登山口で2名の方と会った以外は、常念乗越まで登りの人とは誰とも会いませんでした。下りの方は1名会いました。
常念乗越までは標準タイムよりやや早めに到着し、胸突八丁以外は特にきつい箇所はありません。ただ、ここから常念岳山頂までが疲れが溜まってきたのか、標準タイムを少し超えてしまいました。時間があることからのんびり登っていたこともありますが、何だかんだで1日で2,000メートル以上の獲得標高なのでそれなりに疲れていたのだろうと思います。登山道自体はかなり歩きやすいので、疲れを覚えにくいのかもしれません。
下山はかなり楽に感じました。一泊していることもあるのでしょうが、あれよあれよという間に登山口まで到着してしまいました。高度グラフを見ても右の裾野が顕著に短いです。
記事に載せきれなかった写真は、こちらをご覧ください。