燧ヶ岳登山

2025年06月07日、燧ヶ岳を登ってきました。あるぺん号利用なので前日の夜に竹橋を出発します。途中蓮田SAと上河内SAで休憩を挟みつつ、5時すぎに御池登山口に到着しました。自分以外の乗客は、沼山峠から尾瀬のハイキングを楽しむ様子で軽装備でした。

朝食のおにぎりを頬張ったら、早々に準備を済ませます。通常でしたら余裕のあるコースタイムですが、今回は残雪の影響による加算が読めないので、なるべく早めに出ておきたいです。御池登山口は山の駅から駐車場を挟んだ向かい側にあるので、駐車場を歩いて向かいます。

登山口から入ると、間もなく燧ヶ岳方面との分岐がありますので、左に曲がります。樹林帯ですが、さっそく水芭蕉が姿を見せてくれました。

雨上がりではありませんでしたが、融雪の影響でだいぶぬかるんでいます。そして思ったより早く残雪が登山道に現れました。この先に木道があることは分かっているので、アイゼン脱着の手間を考えてしばらくはツボ足で進みます。着脱が容易なチェンスパも持ってくるべきだったと反省しました。持ってくるか迷ったのですが、時間に余裕がないかもしれないことから、少しでも荷物を減らす方向に舵を切ってしまいました。

途中残雪をトレースに沿って登っていったら、藪漕ぎに突入してしまうプチトラブルが発生しました。本来は途中で左に抜けるべきだったのですが、足元のトレースばかり見ていて気づけませんでした。引き返せば良かったのですが、最初の時点では傾斜にビビッてしまい、そのまま登る方を選びました。ちなみに雪は残っているものの気温は暖かくなっているので、羽虫がそれなりに発生していました。ただ羽音がなく纏わりつくタイプではなかったので、そこまで鬱陶しくはなかったです。

勾配が緩やかになり始めると、間もなく広沢田代です。湿原歩きが続くご褒美タイムです。まだ花は少なめですが、水芭蕉や綿を付ける前のワタスゲなどが見られます。そして池塘が点在しており、空を綺麗に映していました。

広沢田代を抜けると、再び登り道が始まります。広沢田代では残雪はほとんどありませんでしたが、そこを抜けると再び雪が現れます。この辺は木々の密度が低くなり、ルートが分かりにくくなります。トレースがなかったら迷いそうです。ピンクテープはありますが、ピンクテープがない区間でもルート誤りは起きそうに思えたので、トレースがない時は地形図からルートを読む必要があり、大変そうに思えました。なお、直近の遭難事故を受けてピンクテープが分かりやすいものに付け替えられたと聞きましたが、付け替えられる前と思われる、薄くて小さなピンクテープを見かけました。確かにこれは見落としそうです。

途中、下方向に開けた斜面をトラバースする区間があり、少し怖かったです。ストックを出してしまっても良かったかもです。

再び雪が消えて平坦になり、湿原っぽい雰囲気になってきました。2つ目の湿原である熊沢田代に到着です。完全に平坦ではなく、最初小ピークを越えた後、一旦下る形になります。広沢田代と違って小さな池塘が点在しているのではなく、大きな池2つが中央にあります。西方面を望むと、湿原越しに冠雪した新潟の山々が鎮座しています。正面に俎嵓を見据えながら、つかの間のご褒美タイムを楽しみました。

登り道に入ると、木道が残雪に埋もれ始めます。この辺りでアイゼンなりチェンスパを付けても良いと思います。自分はまだしばらくツボ足で進みました。6合目の案内標を見遣りつつ、開けた樹林帯の中を進んで行き、幾つか斜面をトラバースします。やがて急坂区間に出合います。

トレースがあるのでしばらくツボ足で頑張りましたが、上部へ進むとトレースが甘くなってきたので、途中でアイゼンを装着しました。これで足元安定です。とはいえ、傾斜がきついので疲れることに変わりはありません。

この急坂を登り終えると、8合目の案内標があります。一部雪のない区間もありますが、まだ雪面歩きが続きます。そして傾斜が緩やかになり、雪がなくなってきたら、俎嵓に登頂です。

こちらは双耳峰の一座となります。岩場が広がっており、その隙間にはミヤマキンバイらしき黄色い花が咲き乱れています。一等三角点や祠と共に、小さな山頂標がありました。

東には尾瀬沼を見下ろすことが出来、西には柴安嵓を見据えることが出来ます。絶景が広がりますが、虫の数が多いので少し落ち着かなかったです。せっかくの山頂なのでのんびりしたいところですが、今回の核心部はこの先なので、歩みを進めます。

一旦道を下って、俎嵓と柴安嵓の鞍部まで進みます。下り道には一切雪はありませんので、この鞍部にてアイゼンを装着します。ザックはデポしてサブザックに貴重品だけ入れて登ります。

なかなかの斜度とは聞いていましたが、想像以上ですね。30度くらいの斜度になり、最も急なところでは50度くらいの斜度になります。完全に壁を登っている感覚です。休日で好天ということもあり、人が多いのでトレースはしっかり付いていますが、きちんと荷重を制御しないと足元が崩れます。手を使って登っていき、急坂区間を終えると、正面に岩場が見えてきます。

岩場を抜けると、柴安嵓の山頂に到着です。燧ヶ岳の立派な山頂標があります。平坦な広場もあり、虫も少ないので、食事休憩は俎嵓よりこちらの方が良さそうです。西方面には尾瀬ヶ原が広がっています。

自分は食事休憩は取らずに、来た道を下ります。上りよりも下りが核心と言えるので、早くそこを越えて安心したいからです。斜度のきついところは山側に正対して進みます。思いのほか、足元のステップが見づらかったです。荷重の仕方やエッジの利かせ方が甘かったようで、2、3回プチ滑落を経験しましたが、ピッケルのピックを引っ掛けて、30㎝程度で滑落制止出来ました。初めてピッケルを活かせたかもしれません。

この急坂の途中でアイゼンが外れるトラブルがありましたが、分析したところどうやらバックル側のバンドが捻れた状態で締めていたようです。この状態だとバックルが締まらず単に穴を通しているだけになってしまいます。過去に何度か謎の外れ方をしていたのは、これが原因っぽいですね。

鞍部まで下りたら、アイゼンを外します。腰掛にちょうど良い場所がある、雪と地面の境目で脱いだので、アイゼンが泥濘でドロドロになってしまいました。雪面の上で外してしまうべきでした。

その後は俎嵓まで戻って、食事休憩を取ります。荷物の軽減や食事時間の短縮のため、今回は惣菜パンです。虫が少ないところを選んだつもりが、だんだんと虫が集まってきますね。

食事を終えたら、御池登山口に向かって下ります。雪が出てきたところでアイゼンを装着します。天気は下り坂なので、昼前に比べて雲が増えてきました。熊沢田代に出合ったところで、アイゼンを外して以降はツボ足で進みます。

往路に比べて心の余裕があるのか、往路では気づかなかった花々を楽しみます。シャクナゲやミヤマオウレンなどが咲いていました。

その後は広沢田代に向かって下ります。ツボ足で概ね問題なく進めますが、一箇所だけ転んでしまいました。雪はだんだんと減ってきますが、踏み抜きが怖いエリアでもあります。明らかに下部が空洞のアーチの上を通らざるを得ない箇所もあり、ドキドキものでした。この辺はもはや運です。

広沢田代に着いたら、リンドウなどの花を楽しみつつ、最後の下り道に入ります。日が高くなって残雪の融雪も進み、朝に比べて水の勢いが増しています。雨上がり後のプチ沢と化した登山道を下っている感じです。

14時50分ごろ、御池登山口へ下山完了です。バスの時刻まで40分程度余裕がありますが、思ったより時間を食ってしまいました。複数回のアイゼン脱着など、細かいところで時間を取られましたね。泥濘で泥まみれでしたので、山の駅にある洗い場はありがたかったです。

15時30分にバスで出発し、上河内SA、羽生SAで休憩します。それぞれ、レモン牛乳キャラメル、お好み鯛焼きを買いました。そして21時ごろ東京駅前に到着しました。

今回の山行データは以下の通りです。

日程2025/06/07
距離10.76km
歩行時間7:44:12
経過時間9:24:05
高度上昇933m
平均心拍数127bpm

山行日の数日前に、2日連続燧ヶ岳で遭難発生のニュースが流れました。同時期の山行ログを見ても、道迷いの記録が見受けられたので、それなりの緊張感を持って臨みました。幸い好天の休日ということもあって、人が多く見通しも効いたため、特に迷うことはありませんでした。ただ条件が悪いと雪で登山道が見えない時期の樹林帯は、道迷いのリスクが高いと感じました。

装備は12本爪アイゼンとピッケル、ストックです。アイゼンとピッケルは柴安嵓の急坂向けです。それ以外はチェンスパでも大丈夫そうです。ストックは前回の至仏山で付けていたスノーバスケットをそのまま付けてきましたが、これは不要でしたね。雪面で沈むことはないですし、色々と隙間に挟まって邪魔になることが多かったです。

ルートは、御池登山口から広沢田代と熊田代経由の、俎嵓と柴安嵓ピストンです。核心部は柴安嵓直下の急坂ですが、仮に滑落しても途中で止まれるような地形に見えます。滑落に他人を巻き込む、巻き込まれるという方が怖く感じました。そして文中にも書きましたが、積雪時期の樹林帯の道迷いは要注意かと思います。このルートは全体を通して北斜面となるので、融雪が遅いのだと思われます。柴安嵓から南斜面を見下ろしたら、雪はほとんどありませんでした。

記事に載せきれなかった写真は、こちらをご覧ください。

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