利尻山登山

2024年07月27日、最北の日本百名山である利尻山に登ってきました。最初は6月下旬を予定していましたが、確か宿か飛行機が条件よく確保できず、7月下旬を見たら良い感じに取れそうだったので、日程をそこに決めました。ただ天候的には、本州の梅雨明け頃にその梅雨前線が北海道に上がってくるので、条件はあまり良くなかったようです。それが、6月下旬より予約が取りやすかったことの一因かもしれません。ただ結果的に登山当日は天候に恵まれました。翌日はすっぽり雲の中でしたので、1日ずれていたら危なかったです。

4時すぎ、宿泊先であるかむいりしりを出発して、一旦海岸へ向かいます。ここから朝日を見たかったのですが、ちょうどペシ岬に隠れて見えません。仕方ないので朝焼けだけ楽しんだら、山行開始です。今回は鴛泊コースで登ります。登山口のある北麓野営場まで車で走行可能ですが、今回は足を確保できていないので、歩いて向かいます。徒歩1時間程度なので、無理な距離ではありません。利尻島のタクシーは早朝営業していないので、自分で運転しない人で登山口まで歩きたくない人は、送迎付きの宿に泊まる必要があります。

歩いて移動したことで、ペシ岬との角度が変わったため、朝日が見えるようになりました。御来光アメージングしたら、北麓野営場を目指します。

途中、利尻山神社がありますので、山行の無事を祈って参拝しておきます。境内は簡素ですが、池やその周辺の散策路などがあります。

北麓野営場までは、緩やかな上り坂を歩いていきます。左手に利尻山が見えていますが、先へ進んでいくと次第に長官山がその前に覆いかぶさってきて、野営場に着いた頃には完全に目隠しされてしまいます。

北麓野営場に着いたら、登山の準備を済ませます。利尻島はヒグマがいないので、熊鈴を鳴らさずに登ります。ただ海を泳いで渡って上陸した記録もありますので、絶対にいないとは言い切れません。この辺はリスクをどう捉えるか次第です。

しばらく緩やかな道を歩いていくと、20分ほどで日本名水百選にも選ばれている甘露泉水に出合います。利尻山ではここが最後の水場となります。ただ登山を開始して間もないので、特にボトルも空いていないですし、水は汲まずに進みます。

甘露泉水を過ぎて少ししたところで、3合目の標識があります。そこから乙女橋を渡って20分ほど進むと4合目野鳥の森です。さらに緩やかに階段を登って20分ほどで、5合目雷鳥の道標となります。

ここまで樹林帯ですが、この先から徐々に木の丈が低くなり、視界が開けてきます。20分ほど歩くと、6合目第1見晴台に着きました。ちょっとした広場になっており、利尻島や礼文島を眼下に望みながら休憩できます。

まだ先は長いので、休憩はせずに先へ進みます。景色を楽しみながら登っていくと、20分ほどで7合目胸突き八丁になります。ここまで大体1合登るのに20分程度を要していますが、ここから一気に所要時間が増します。99%からなかなか進まないプログレスバーのような感じです。

勾配がやや急になりますが、景色や花々を楽しみながら登っていきます。途中、岩場が連なる第2見晴台があります。展望も良いですし、休憩したくなる頃合いですので、多くの人が腰を下ろしています。

自分は写真だけ撮ったら、目の前に見える長官山を目指して、先へ進みます。北海道北部にしか生息していないシュムシュノコギリソウなど、珍しい花々を楽しみながら歩いていきます。7合目から40分ほどで、8合目である長官山に着きました。

長官山の頂に立つと、その正面に利尻山の山体を望むことができます。長官山の山頂は結構広いです。だいぶ登ってきたことで、展望も素晴らしく、大休止に良い場所かと思います。山名の由来は、かつて北海道長官がここまで登ったことです。また山頂の端の方には大きな句碑が建っています。

少しだけ休んだら、先へ進みます。正面の利尻山と共に、足元の花々も美しいです。ミソガワソウ、エゾイブキトラノオ、オオイタドリなどを楽しみながら、緩やかに下っていきます。草原のような大らかな地形も印象的です。

下り終えると、そこには利尻岳山小屋があります。遠くから白い屋根が見えていた建物です。こちらは営業小屋ではなく避難小屋となります。携帯トイレブースも併設されています。

さて、この先は再び上りとなります。オトギリソウ、タケシマユリ、イワギキョウ、ユウゲショウと、高山植物も一層華やかになっていきます。後ろを振り返ると、足元の高山植物の先に海が広がっており、絶景です。

足元は徐々に砂礫になっていきますが、それほど歩きにくさはありません。登山道の脇に目を遣ると、利尻島固有種であるリシリヒナゲシが咲いていました。薄い黄色が特徴的ですね。山行中に数株見かけましたが、あまり数は多くないようでした。他にもシコタンハコベなどを楽しみました。

9合目に着きました。8合目から45分程度掛かりました。こちらも比較的広い場所であり、ベンチも幾つか置かれています。展望も優れているので、休憩場所に良いです。携帯トイレブースもあります。

ここから最後のひと踏ん張りです。とはいえ、事前の情報で9合目以降が大変と聞いていたためか、それほどつらくはなかったです。確かに砂礫で足元が滑りやすい面もありますが、よく整備されているので歩きにくさは感じませんでした。チシマフウロ、ヨツバシオガマ、アズマギク、エゾツツジ、エゾカワラナデシコなどの花々を愛でながら登っていきます。

途中、資材運搬ボランティアの案内がありました。体力に余裕がある人は1個4kgの土嚢のような袋を50メートル上まで運んでほしいといった内容です。体力は余裕あるかな~、と思って、1個だけ持って登りました。しかしこれ、なかなかしんどいです。軽い気持ちで手を出さない方が賢明です。さすがに途中で1回地面に置いてしまいました。

山頂手前の広場に出たら、ローソク岩を眺めながら最後のひと登りです。ここはやや急勾配で足元も滑りやすいので、少し慎重に進んだ方が良いです。

そしてついに、利尻山山頂に着きました。標高1,721メートルとなります。この標高でも高緯度帯なので、たくさんの高山植物が咲いています。山頂はスペースはあるものの、あまり広くはありません。何とか適当な場所を見つけたので、そちらで昼食休憩をとります。

天気にも恵まれ、絶景を望みながらの食事はとても贅沢です。利尻島の最高地点なので、何も遮るものはなく、島や海を見通すことができます。長丁場の山行なので、食事や行動食は多めに持ってきていました。そのため全部は食べきれないので、幾つかは残して下山中か下山後にいただくことにしました。

山頂には利尻山神社奥宮の祠とその手前に山頂標があります。また三角点もあるのですが、そこに腰かけて休憩している人がいたので、その時に来た人は気づけなかったかと思います。良く見る三角点と違って、平たくて人が座れるような大きな三角点です。

また山頂には、ヒメシラフヒゲナガカミキリを何匹か見かけました。突然ズボンに止まってきて、結構重い感触だったので、最初は驚きました。こちらの昆虫の生息域は、北海道のみらしいです。

山頂付近では利尻島の固有種を色々と見つけたかったのですが、リシリゲンゲとリシリオウギ以外は見つけられませんでした。そう簡単には見つけられないものなんですね。

さて、帰りは来た道を下るピストン下山です。帰りも珍しい花を探しながら下っていきます。チシマリンドウなどを見かけましたが、利尻島の固有種は見つかりませんね。全体的に勾配は急ではないので、それほど膝には堪えません。でも先日の鳥海山よりは少しダメージがある感じです。土嚢運びのあった丸型の段差のゾーンは、段差の高さが低いところを探しながら下っていくアスレチック感が楽しかったです。

段々日が高くなってきたので、暑さが堪えます。木々の丈が低くて眺望は素晴らしいのですが、その分日を遮るものがないので、じりじりと焼かれていきます。それでも本州に比べたらだいぶ涼しいのでしょうけど。

黙々と下山を続けますが、水の必要量を見誤り、手持ちの飲料水がほぼ尽きてしまいました。喉の渇きを感じつつ、早く樹林帯に入りたいなあ、と思いながら歩き進みます。下山口の手前に甘露泉水があるので、そこで補給するつもりです。

そしてついに水場に辿り着いた時にはほっとしました。まずは500mlペットボトルに汲んだものを軽く飲み干し、そしてもう1杯追加しました。名前の通り水が甘いかはよくわかりませんが、飲みやすい水です。

甘露泉で生き返ったら、そのまま下山口へ向かいます。下山口に着いたらトイレに寄り、その後は東屋で、山頂で食べきれなかった惣菜パンをいただきます。それから歩いて利尻富士温泉まで向かい、そちらで山行終了としました。

今回の山行データは以下の通りです。

距離19.86km
歩行時間8:51:06
経過時間9:56:26
高度上昇1,741m
平均心拍数146bpm

海岸線から山行を始めて登頂まで至ったので、Sea to Summitの達成となりました。登山口まで1時間弱歩いているので、山中を歩いていた時間はもう少し短いです。山中にトイレはなく携帯トイレ必須とされていたので、ザックに3個くらい積んでいたのですが、結局1個も使うことはありませんでした。特に尿意を我慢していたこともなく、普通に大丈夫でした。もしかしたら水分摂取量が少なすぎたのかもしれません。

山行当日は好天に恵まれて、絶景を楽しむことができました。薄雲が広がっていたので、すっきり一面の青空とはなりませんでしたが、それでも十分な天気です。登山道も整備されていて歩きやすく、山行時間が長いことを除けば、初級者中級者向けの印象でした。夏期の高緯度帯なので日も長く、4時すぎに日の出を迎えて19時すぎに日の入りとなることから、山行時間が長いことによるリスクにも対処しやすいです。

今回利尻島に後泊するか迷いつつ、後泊を設定しました。結果だけ見ると余裕でフェリーで稚内まで戻れる時間に下山できましたが、仮に天候不順など条件が悪かった場合は山行時間が大きく増える可能性もあり、後泊を設定した方が無難かと思います。

記事に載せきれなかった写真は、こちらをご覧ください。

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