久しぶりの書評です。本当に最近は本を読まなくなってしまいました。本著の内容自体は技術書寄りですが、読み物です。2、3日あれば無理なく読めるくらいのボリュームです。
第1章では、人工知能とは何か、ということを知るための土台づくり、第2章から第4章では、探索推論、知識、機械学習という順番で、これまでの人工知能研究の歴史を追う形で説明がされています。過去の歴史を学ぶことで、現在ブームとなっているディープラーニングの何が画期的であったかを理解できるようになっています。
第5章ではディープラーニングについての説明です。ディープラーニングの画期的な点は、特徴量と呼ばれる学習のパラメータを、自ら検出できる点です。つまり人が指示をしなくても良いということですが、その仕掛けとして、入力と出力(正解情報)に全く同一の情報を用いています。つまり人間の学習と同じで、入力と出力が一致するように、ネットワーク上のパスを調整することで学習します。入力と出力の間にある中間層は入出力層より少ないので、入出力層より抽象化されています。そうした中間層をディープに重ねていくことで、より正しい抽象化が行われていくという仕組みです。
第6章では、ディープラーニングの先に待っている人工知能の発展について記載されています。本著は2015年に執筆されたものなので、いささか古い内容となりますが、我々素人が認識している範囲では、特に違和感なく読めます。産業や社会、創造性、知能と生命など、様々な視点で人工知能について語られており、人工知能の今後に思いを馳せる上での土台になりそうです。色々と書かれていますが、本著が随所で書いている、期待値を上げ過ぎない形となっています。現在の人工知能が得意なことを理解して今後を展望するのが、確度の高い未来予想に繋がるのだと思います。
なお、書名の疑問に対する回答は示されていますが、本著を読み進めた後なら、まあそうだよね、という回答になっています。