12歳の少年が書いた量子力学の教科書

量子力学について何となく知識を得ておきたいので、出かけた書店に置いてあった量子力学関連の書籍として本書を読みました。入門書と専門書の架け橋となることを目指した書籍であり、理系であっても最初の読む一冊としてはハードルが少し高かったかもしれません。とはいえ、微積分や行列、三角関数などの基礎的な知識はありますので、何となく読み進められました。

第1章では量子力学の始まりについて書かれています。全ての粒子、そしてエネルギーさえも、プランク定数に基づく最小単位があり、その整数倍でしか存在しえない離散的な値であるという考えは驚きでした。エネルギーさえもそうなのですね。

第2章では古典力学の常識に当てはまらない実験結果から始まる量子論の始まりについて書かれています。ここで出てくる光の二重性はすっきりしませんでしたが、これは現時点で人の感覚に沿う解釈は与えられていません。諸々の実験結果に基づく事実となります。結局のところ物理学自体が数学と違って正解の確証を得ることが出来ない分野であり、あくまで予測や近似に収束するものです。かつては正解と思われた古典力学さえ、後になってマクロ世界での近似値と分かり、正確ではなかったという事実が象徴的です。

第3章は行列力学と波動力学による数式化が説明されます。ここはがっつり数学が登場する章となり、ボリュームも100ページ超となります。ここが入門書との違いの主たる部分かもしれません。数式のひとつひとつは追い切れず、何となく雰囲気を掴みながら読み進めました。エネルギー、力、時間、位置、質量、速度などのパラメータの相関性が分かれば、それぞれの計算値の微分、2階微分、積分などが表す値の意味が何となく見えるかと思います。

第4章から再び読み物の要素が強くなります。第3章の数式でだいぶ疲弊したので、読みやすくてほっとしました。第4章では、有名なシュレーディンガーの猫について登場します。他にも色々と思考実験が登場し、量子力学のミステリー性故に、解釈方法が常に横たわる異質な学問であるとも理解しました。

第5章では、量子力学の礎が築かれてから、現在までの歴史の中で出てきた、反粒子、不確定性原理、多世界解釈、超弦理論などの話が概説されています。第6章では、近未来の応用技術として、量子コンピュータや量子テレポーテーションについて少し触れられています。

一通り読み終えましたが、正直本書が伝えたかったことは3分の1も理解できていないだろうと思います。量子力学の内容は単純に読み物として読むだけでも十分に面白いので、より入門レベルの本でも良かったかな、と思う反面、より専門的な世界を垣間見られたのは有益だったと思います。概念や言葉を知れただけでも、今後の何かの気づきに繋がるかもしれません。

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