
2日目、4時すぎに起床してモルゲンロートを見に外へ出ます。青空が広がる天気で、浮かんだ雲に朝日の赤色が映っています。山陰に隠れるので朝日を直接望むことはできません。4時50分ごろには朝日を受けてオレンジ色に染まる涸沢カールを望むことができました。

その後は朝食をいただき、山行準備を済ませます。今回はあろうことかヘルメットを忘れたので小屋でレンタルしました。そしてアタックザックは無料で借りられるので、必要な荷物だけ詰めて軽量化を図ります。


6時すぎ、涸沢小屋を出発します。涸沢小屋から出発する場合はパノラマコースではなく、カールの中腹に沿って登るコースになります。最初は低木に囲われた樹林帯になります。足元は徐々に岩が多くなっていきます。時々岩陵帯に出るところがあり、涸沢カールの雄大な眺めを楽しめます。併せて足元にはチングルマやアオノツガザクラなど可愛らしい高山植物が咲いており、遠くも近くも楽しめます。

樹林帯を抜けるとガレ場登りになります。緩やかなので特に登りにくさはありません。途中雪渓が登山道の傍まで迫っている箇所がありますが、登山道には被っていません。

やがてちょっとした広場に出ると、そこがお花畑ゾーンです。山肌に黄色い花を中心に咲いている様子を楽しめます。百花繚乱というほど賑やかではありませんが、ほっと一息つける景色です。

ここから先がザイテングラートになります。鎖やハシゴを使った岩場登りが続きますので、ストックはしまいました。全体的に危険箇所は少なく、百名山にそこそこ登っている登山者でしたら特に苦労することはないと思います。それなりに高度感を覚える箇所もありますので、きちんと三点支持で登ることが肝要です。


天気もよくほぼ無風なので、気持ちよく登れます。この時間帯でしたら暑さもそこまでではないです。涸沢カールや遠くの山々の稜線を望みつつ、様々な高山植物を愛でます。

「ホタカ小ヤ20分」のペンキが見えたら、実際に20分ほどで穂高岳山荘に着きました。穂高岳山荘の手前はコース上唯一残雪が被っている箇所になります。ロープが張られていてステップも作られていますが、万が一滑落するとカールの底へ真っ逆さまなので、慎重に通ります。1回荷重を間違えて足を滑らせてヒヤッとしました。ごく短い距離ですが、不安ならお守りにチェンスパがあった方が良いかもしれません。

穂高岳山荘前に着いたらテラスで小休止します。西に涸沢岳、東には奥穂高岳がそびえています。奥穂高岳の最初は直登なので、その様子を見て気を引き締めます。

いざ奥穂高岳に向けて山行再開です。ここから山頂まで1時間弱掛かります。序盤の岩場直登ではさすがに邪魔になると思ってミラーレス一眼はザックの中に収納して登りました。足場がガレているので注意が必要ですが、三点支持を意識して登れば、危ないと感じる箇所はほぼありません。ただしザイテングラート以上に高度感を覚える箇所が多いので、それが苦手だと少しつらいかもしれません。途中ルートを間違えて未整備のルートを進んでしまいましたが、足場がザレザレで如何に登山道が歩きやすいかを体感しました。

直登区間を抜けたら、登り基調の中に軽くアップダウンを挟みつつ水平距離を稼ぎます。一旦はしまったミラーレス一眼を再び取り出して絶景の撮影に勤しみます。

やがて奥穂高岳の山頂が見えてきました。山頂は多少広さがありますが、岩が多いので寛ぐスペースはあまりありません。山頂展望図がある場所から、向かい側にある穂高神社の祠を撮るのが基本スタイルみたいなので、行列に並んで撮影してみました。


自分が並んだ時はちょうど人が少ないタイミングだったみたいでラッキーでした。周囲を見渡せばほとんどの山を眼下に見ることができます。上高地方面を望むと、焼岳の火口を見下ろせます。北アルプスの盟主である奥穂高岳からは、焼岳さえも眼下なのです。遠くには富士山のシルエットも見えました。

反対側には尖った穂先が印象的な槍ヶ岳を望むことができます。好天で360度の眺望を得られる絶好の登山日和でした。周りの山々をほぼ眼下に収めることができるのは気持ちいいですね。

写真撮影を終えたら列から離れて適当な場所で休憩して、のんびりと絶景を堪能します。視線の先には裏ボスであるジャンダルムが待ち構えていますが、命が惜しいので挑みません。

無風なのでいつまでもいられる感じですが、名残惜しくも下山します。下り基調なので楽ですが、ガレ場で足を滑らさないように慎重に下ります。

穂高岳山荘前まで戻ってきたら、ホットコーヒーで一服します。絶景を望みながらの山コーヒー、いいですねえ。その後は冷たいコーラも欲しくなり、自販機で購入して喉を潤しました。それからテラスで寝転がってゆっくりしますが、太陽が眩しく暑くてすぐに起き上がってしまいました。また、山荘前の残雪が登山道に被った部分では、小屋の方がチェーンソーでステップを作る作業をされていました。削り出された雪の塊がカールの下へ豪快に転げ落ちていきます。

ひとしきり満足したら、ザイテングラートを下ります。ストックは使わず、代わりに腕を使って着地をコントロールしていきます。ザイテングラートを抜けたら、お花畑でストックを取り出して、下り続けます。パノラマコースとの分岐は元々来た道へ戻りました。時間もあるので帰りはルートを変えても良かったのですが、アップダウンが余計に発生しますし暑かったので、ピストンにしました。

涸沢小屋に戻ったら、チャーシュー麺と生ビールで昼食をいただきます。奥に見える山の斜面では、ニホンザルの群れがけたたましく鳴きながら、何やら揉めている様子でした。その後はソフトクリームやスプライトを飲みつつ、まったりと景色を眺めながら過ごします。

この日の夕食は、17時45分回です。メニューは鮭のムニエルになります。朝食でも鮭が出ましたが、夕食ではタルタルソースが掛けられて味変になっています。

そしてこの日は天気が良さそうでしたので、キャンプ場と併せて、星空撮影もしてみました。三脚やポタ赤は持ってきていないので、雑に手摺りなどに置いて撮影です。細かい雲が出ていたこともあり、撮影条件は微妙でした。星は見えるものの、降ってきそうな満天の星空とまではいかず、地上と比べて大きくは変わらない感じです。
なおこの日も消灯時間に合わせて、20時30分ごろに就寝しました。余裕のある行程なので、高山病の症状も一切なく、快適に過ごせています。