2023年10月13日から14日にかけて、甲武信岳を登山してきました。甲州(山梨)、武州(埼玉)、信州(長野)の境にそびえる山です。最初は西沢渓谷から入り、毛木平へ抜ける日帰り山行を想定していましたが、標準タイムでも日没時間を超える見込みであることから、小屋泊に切り替えました。一方で小屋泊だと時間にだいぶゆとりが出来るので、寄り道ルートを追加してみました。当週中の山行決定でしたが、平日の13日が公休のためそこを活用して小屋の予約を取れました。ところで、甲武信岳と甲武信ヶ岳、両方の表記を見かけますが、どちらも正しいそうです。
特急あずさで塩山駅まで移動し、駅前から山梨交通バスで西沢渓谷まで移動します。平日ということもあってか、車内は空いていました。西沢渓谷に着いたら、さっそく山行開始です。しばらくは平坦な道が続きます。途中に公衆トイレがありますので立ち寄っておきます。山中は甲武信小屋までトイレはありません。左手に笛吹川の源流を眺めつつ道を進んでいくと、右手に登山口が見えてきます。登山道は2つありますが、今回は徳ちゃん新道を使います。
しばらくは平坦な道を歩きます。途中、道中に若木がニョキニョキ生えてきていて、思ったより荒れ気味だな……と感じていたら、単にルートを外れていたようです。登りになっているところを見て正しいルートに気づいて戻りました。ここからしばらく杉林の中を九十九折に登っていきます。意外と滑りやすい箇所が多くて足元注意です。樹林帯ですが日はそれなりに差し込むので明るい道です。
途中鳥のさえずりが賑やかに聴こえる箇所があり、足を止めてみました。たくさんのヒガラが近くの木々を転々と飛び回っています。あまり遠くに逃げる様子がなかったので、撮影を頑張ってみました。
登りがひと段落すると、シャクナゲに囲われた道を通っていきます。5月下旬頃はきれいでしょうね。そして少しずつ紅葉している木々も現れました。甲武信岳は常緑樹も多く、山一面が赤く染まる様子ではありませんが、ピンポイントに差し込まれる紅葉も美しいです。尾根に出ると青空もよく見えてくるので、青と赤のコントラストが映えます。
しばらく進むと近丸新道との合流点に着きます。小さなスペースと手頃な岩があったので、シットマットを敷いて軽く食事休憩とします。シットマットは今回が初使用ですが快適ですね。周囲の展望はありませんが、ちょうど登ってきた方向が高低差で多少開けて見えます。
お腹を満たしたら山行再開です。ここから岩場を交えた急登が続きます。1時間強、黙々と登っていきます。展望はほとんどありません。息は上がるのですが、それと同時に脚力が失われていくのを感じます。片方の脚にダメージが蓄積しないよう、意識的に左右の脚をバランスよく使いました。心肺機能に比べて筋肉疲労は回復が遅いので、不要に追い込まないようにします。
急登が終わると、道は緩やかになります。倒れた木々や岩場などを通っていくと、左手に視界が開けます。富士山のシルエットもくっきり見えて、ご褒美ですね。その後再び少し登りを頑張ると、木賊山山頂に到着です。ちなみに読みは”とくさやま”です。展望はまったくありません。
木賊山を下って甲武信小屋を目指します。正面には甲武信岳が鎮座しています。途中ザレ場の区間がありますので、足を滑らさないように注意です。下り終えると、甲武信小屋が見えてきました。
チェックイン手続きを済ませたら、寝床へ行って寛ぎます。すぐに寝るのは良くないので、しばらくしたら外へ出てみます。山行後の一杯ということでコーラを買って飲みますが、午後に日陰となるのでちと寒かったです。小屋の前にはテラスがあり、秩父方面を望むことができますが、この日は少々ガス気味ではっきりとは見えませんでした。その後は小屋の裏手に行って、ぼーっと景色を眺めます。こちらは日が当たるので、多少暖かいですね。ただ登山靴を履かずにサンダルで出たので、足元が結構冷えます。
やがて夕食の時間となりました。前回の鳳凰山で苦しんだ高山病の症状は一切なく、カレーライスは大盛でいただきました。それから20時ごろ消灯して就寝です。夜はさすがに冷えますね。高山病の症状が全くないときは、早い時間にはあまり寝付けず、大体22時から23時頃寝付くことが多いです。
2日目、5時手前に起床し、朝食をいただきます。その後は外へ出て、朝焼けを楽しみます。朝日はちょうど山陰に隠れて見えません。
6時10分ごろ、小屋を出発します。まず最初に寄り道して荒川源流点に向かいます。テントエリアから下の方へ伸びる道に沿って、歩いていきます。道は細いですが、きちんと整備されています。15分ほど下っていくと、荒川源流点に着きました。ただこの時は、さらに上流の沢から大量に水が流れ込んでおり、あまり源流といった感じではなかったです。
源流点の見学を終えたら、下りてきた道を登って戻ります。この途中でようやく日が差してきて、周囲が明るくなりました。甲武信小屋まで戻ったら、次は三宝山へ向かいます。甲武信岳は経由せずに巻き道を歩きます。しばらく歩くと甲武信岳からの道と合流します。緩やかに下っていき、その後急な登りになります。霜柱を踏みしめつつ短い急登を終えたら、後は緩やかな道をしばらく進んで、三宝山の山頂に到着です。
標高2,483メートルの三宝山は埼玉県最高峰となります。山頂は広場になっていますが、周りを木々に囲まれているため眺望はありません。そこで眺望を得るために三宝岩へ向かいます。特に案内標識は出ていませんが、三宝山山頂の手前に左方面へ入る細い道が幾つかありますので、そこを通っていくと三宝岩のある場所へ出ます。
岩をよじ登っていくと、富士山を始めとする山々の稜線を楽しむことができます。ただ甲武信岳でより良い景色を見られますので、無理に寄らなくても良いかと思います。
その後は今回の山行のメインである甲武信岳に向かいます。来た道を戻って巻き道との合流点を過ぎると、甲武信岳山頂直下の急登が始まります。ガレ場で歩きにくさはありますが、距離は長くないので一気に登ってしまいます。
そして甲武信岳山頂に到着です。標高は2,475メートルになります。前日の快晴に対してこの日は雲が多くて曇天ですが、ガスはないので周囲の山々はばっちり見渡すことができます。日本百名山のうち43座が見えるとのことですが、不勉強につき山座同定はほとんどできません。分かるのは富士山と八ヶ岳連峰くらいですかね。遠くには冠雪した北アルプスも見られました。
山頂はあまり広くありませんが、富士山が見えるちょうど良いスペースが空いていたので、そこにシットマットを敷いて食事休憩を取ります。富士山は少し山陰に近い方向にあるので、山頂標の一段下にいかないと見えません。そして眼下には常緑樹と紅葉の斑模様が広がっています。しばらく曇天でしたが、次第に時折晴れ間も覗くようになり、景色を楽しめました。
たっぷりと堪能したら、下山開始です。毛木平方面に向かって下ります。山頂直下は急坂になっており、息を切らしながら登ってくる登山者に道を譲りながら、下っていきます。急坂を終えると道は平坦になり、やがて国師ヶ岳方面との分岐点に出合います。こちらを右手に曲がり、千曲川源流点を目指します。
樹林帯の中をトラバースしながら下っていきます。先の急坂ほどではありませんが、そこそこ勾配はあるので、皆さん疲れながら登っている感じです。平日と休日の違いはありますが、ほぼ誰にも会わなかった西沢渓谷からのルートに対して、こちらはたくさんの登山者に出会います。日帰りピストンが容易ということで、人気なのでしょうね。
そして千曲川源流点に着きました。千曲川信濃川源流地標の看板があります。千曲川と信濃川は同じ川を表しており、長野県内および新潟県内それぞれにおける呼称の違いになります。チェーン付きのカップが岩穴付近にありましたが、そこから水は出ておらず、少し離れた箇所から湧水していました。指を入れて水の冷たさを味わいます。さらに上流方向には涸れ沢があり、水の量が豊富な時はここを流れてくるのだろうと思いました。
その後は千曲川に沿って下っていきます。最初はよちよち歩きの赤ちゃんのような流れですが、徐々に川幅は広がり、流量も増していきます。途中崖下を流れていく様子を見て、もう追い越されたな……と感じました。
勾配は全体的に緩やかで特に下る分には歩きやすいです。朝方は曇天気味でしたが、昼に向かうにつれて晴れ間が多くなり、日が差している時間の方が多くなってきました。これは日帰り山行組が大勝利だったのかもしれません。
千曲川に沿って歩いていくと、途中でナメ滝という景勝地に出合います。恐らく滑滝という字が当たると思われ、垂直方向の落差はなく、水平方向に滑り落ちるような流れになっています。なので写真にきれいに収めるのは、なかなか難しいです。
その後、先行する登山者が何やら道に迷っている様子でしたので、正しいルートから声をかけて誘導しました。自分も先行者が迷っている様子を見て、事前に注意深くルートを見たおかげで正しいルートに気づけた感はあります。広めの道がまっすぐ伸びていく中、左に細い階段がある箇所でしたので、確かに視線の遣りどころによっては、見落とすかもしれません。
次第に道は平坦になって、下山口が近いことを感じさせます。千曲川はすっかり立派な流れとなりました。途中に大山祇神社の祠がありますので、そちらで参拝をしておきます。それから十文字峠側からの合流を経て、毛木平駐車場に着きました。
とりあえず下山完了ですが、ここからバス停までの車道歩きという延長行程があります。これが公共交通機関組の大変なところですね。しばらくは林道の中を轍に沿って歩きます。林道を抜けると集落に出ますので、道に沿って進みます。天気もすっかり青空が広がっており、遠くに山々を望みながらのどかな村を歩くのは、気持ちいいですね。
バス停に着いたのは13時10分ごろ。1本前のバスが13時02分発であり、ギリギリ間に合いませんでした。毛木平駐車場の時点できちんと時間を確認して、ペース調整していれば間に合ったと思われます。特に周辺に観光施設はないため、デイリーヤマザキで昼食を買ったら、梓湖まで歩いてそこで昼食をいただき、再びバス停に戻ってくるという形で、時間を潰しました。
その後はバスで信濃川上駅まで向かいます。出来れば温泉に浸かりたいところですが、川上村に温泉は湧出していないんですよね。入浴施設としてはヘルシーパークはありますが、公共交通機関勢としてはバス待ちがつらいので諦めました。信濃川上駅からは、小海線で小淵沢駅まで向かい、臨時のあずさ号に乗り継ぎました。小淵沢駅では切符の都合で一度出場する必要がありますが、改札の列がわりと長くて焦りました。
今回の山行データは以下の通りです。
距離 | 25.00km |
歩行時間 | 11:01:27 |
経過時間 | 26:59:45 |
高度上昇 | 1,846m |
高度下降 | 1,591m |
平均心拍数 | 98bpm |
西沢渓谷から入って毛木平へ抜けるルートです。登山口と下山口を別にするという、公共交通機関勢の強みを活かしたコース取りとしました。一泊二日行程にしたことで、だいぶ余裕ができたので、荒川源流点や三宝山などへの寄り道をアレンジしました。西沢渓谷からのルートは人が少なく快適で、気持ち良いペースで登っていたら、思いのほか脚に堪えました。下手すると攣るかな、と感じたので、ペースを制御しました。道自体は歩きやすいです。それに対して毛木平からのルートは、山頂直下を除いてわりと緩やかで歩きやすかったです。車がないと1時間の車道歩きを強いられるので、こちらからのピストンはつらいかな、と思いました。
そして冒頭に記したように、甲武信岳は山梨県と埼玉県と長野県の境にあり、各県を流れる一級河川の源流点を有しています。今回は荒川と千曲川の源流点を訪れることができました。笛吹川は上流域を眺めましたが、源流点は沢を登っていく必要があり、且つ特別な標もないので、対象に含めませんでした。
記事に載せきれなかった写真は、こちらをご覧ください。