斜里岳登山

2024年09月16日、斜里岳を登山してきました。この日は羅臼岳からの移動となり、バスのダイヤの都合上出発がだいぶ遅くなってしまうのですが、天気や日程都合を考えてこの日に決めました。翌日なら早朝発が可能ですが、天気予報が不安定で雨が降る可能性があること、特に沢筋なので急な雨は怖いです。また、復路の飛行機に間に合わないリスクも無視できません。

斜里バスターミナルに到着したら、知床斜里駅からタクシーで清岳荘まで向かいます。途中から未舗装路となり、ガタガタの道を結構長いこと進み、山の中腹まで走っていきます。斜里岳に向かう途中は、山頂に雲が掛かっていたのですが、次第に晴れていく様子が見えました。到着後は登山届の記入を行ない、斜里岳神社で安全祈願をして、11時すぎに入山しました。

最初は5分ほど樹林帯を歩いていくと、やがて林道に出合います。日が遮られないので、結構暑さを感じます。林道を10分ほど歩くと、案内標が見えてきますので、左手に曲がって再び登山道に入ります。

沢を近くに見ながら登山道を進みます。広葉樹は紅葉の準備中といったところでしょうか。日に照らすとほんのり黄色いかな、といった感じです。本格的な紅葉はもう少し先みたいですね。

やがて沢の渡渉ゾーンに入ります。前日の雨で沢は増水気味です。このルートはとにかく頻繁に渡渉することになります。基本的に水に浸かることを前提に足場を探した方が賢明です。水から頭を出した岩を探して飛び石することも可能ですが危険です。

後は渡渉コースのあるあるですが、道迷いに注意が必要です。ピンクテープによる案内が随所にありますが、それでも時折どっちに行けばいいんだろう、と迷う箇所がありました。このコースに慣れてくると、このくらいコースが自明な場合はピンクテープを出さないんだな、と分かってきますが、最初はこっちみたいだけど進んでいいのかな……と不安になります。

また自分は登りでは基本的にストックを使わないので、しばらくストックなしで渡渉していたのですが、渡渉に関してはストックを活用した方が良いです。圧倒的にバランスをとるのが楽になりますし、その結果利用できる岩の選択肢が増えて、安全に素早く渡渉できます。

最初は渡渉の度に写真を撮っていましたが、あまりに繰り返すので途中から撮らなくなりました。途中岩壁に大きな口が開いた場所があり、仙人洞と名付けられていました。

やがて下二股に出合います。ここで旧道と新道へ分岐します。旧道は沢筋を登る急登コースで、自信のない人は新道を使うように促されています。また旧道は非常に滑りやすいため、下山時の利用は推奨されておらず、上りでの利用が一般的になります。今回はこの沢登り入門的な山行も楽しみにしてきたので、旧道一択でした。

旧道に入ってもしばらくの間は沢登り的な要素はありません。沢筋に沿って急登を進みます。水蓮の滝や三重の滝など、名前が付けられた滝が次々と迎えてくれます。途中、真っすぐ歩くと涸れ沢に当たるところがあり、これは入ってはいけないパターン、と思って別の道を探すものの見つかりません。よくよく探すと、涸れ沢の下手の遠いところにピンクテープがありました。確かに沢に近づくには自ずと下手にいくと想像はできるのですが、ちょっと迷ってしまいました。

羽衣の滝あたりから、沢登り要素が出てきます。まずは滝の前を渡渉するのですが、結構流れの速い場所を、滑りやすそうな岩の上を歩く必要があります。転倒したら嫌だな、と思い、念入りに手も使って渡りました。

その後は羽衣の滝の横を登っていきます。水はほとんど流れていませんが、地面はツルツルで沢を登っている感じです。凹凸など手や足を掛ける場所はあるので、手足の置き場を間違えなければ特に難しくありません。

この後も時々こうした水に削られたツルツルの斜面を伝う箇所が出てきます。真っすぐ上に登るのはそれほど難しくないのですが、横に進むのは結構怖いです。真っすぐ登る場合は、仮に踏み外してもそれまでに使ってきた足場があるという安心感が大きいのかもしれません。

それから万丈の滝、見晴らしの滝、竜神の滝を観賞しつつ、沢を登っていきます。見上げれば青空が広がっており、とても気持ちいい沢登りです。前述の通り旧道は上りでの活用を推奨されていますが、下りに使っている人もおり、2名ほどすれ違いました。

七重の滝や霊華の滝に差し掛かったあたりで、そろそろ滝も終わりかな、という景色になってきます。段々と沢の幅が小さくなり、急登が続きます。まるで空へ登っていくような感じを覚えます。水深は浅いですが、水がしっかりと流れる沢の端っこを伝って登ります。

やがて徐々に沢の流れは平坦になってきます。周囲を背の低い木々に囲われた沢を登っていきます。そろそろ沢頭かな、と思って逐次写真に収めるのですが、なかなか水が途切れることはありません。そうこうしているうちに紙垂が見えてきて、上二股に到着しました。

上二股に着いた時点で14時15分であり、ほとんど余裕のない行程です。ここで引き返すのが賢明なのでしょうが、ギリギリ可能な範囲ではあったので、山頂へ向かうことにしました。

残念ながら空は曇ってきてしまいましたが、ここから少し巻き気味で登ります。胸突き八丁と呼ばれるガレ場を登っていきます。それなりに勾配があるので、ペースを上げると息が上がります。最初の方はしばらく沢が流れており、途中に右手に折れた先に源頭があります。ただ地図だと左手に見えるようなので違うのかもしれませんが、歩いた限り左手には見えませんでした。途中一旦平坦になる区間がありますが、再び勾配が急になります。やがて視界が開けてくると、ザレ場登りになります。滑りやすいですが、道に沿っていけば、登りにくいことはありません。

馬の背に到着です。ここまで来ればあと一息ですので、少しだけ眺望を楽しみます。いやー、ここまでほとんど下界の様子は見られなかっただけに、感動もひとしおですね。

それから岩場交じりの急登を進み、その後少し下ります。そこには斜里岳神社がありますので、登山の無事を祈願しておきます。

そして正真正銘最後のひと登りをして、斜里岳山頂に登頂です。標高1,547メートルになります。雲が広がって日が陰ってしまいましたが、ガスはないので眺望はばっちりです。オホーツク海から太平洋まで見渡すことができます。太平洋側では雲の向こうに国後島の姿も見えました。

また周囲の山々の様子も見下ろすことができます。山に囲われた雄大な光景が良いですね。時間が遅いこともあって、他に登ってくる人はおらず、山頂の景色を独り占めでした。山頂では持ってきた惣菜パンを食べて、腹ごしらえを済ませます。

その後は山頂から少し下りて二等三角点のある場所へ向かいます。ちょうど山頂手前で分岐していたところです。三角点は低い場所にあり、低木に周囲を囲われていると、分かりにくいかもしれません。

下山の行程に余裕がないので、休憩もそこそこに下山を開始します。そして恐らく使うことになるので、あらかじめヘッドライトを装着しておきました。下りも巻き気味で進みます。30分ちょいで上二股まで戻ってきました。

上二股には携帯トイレブースがありますので、携帯トイレを初めて使ってみました。これまで携帯トイレを持って何度か山行していますが、8時間山行でも特に尿意を強く感じることがなく、使う機会がありませんでした。今回はこの後の予定山行時間を考えたら、ここで済ませておいた方が良いと判断しました。セッティングはビニール袋を広げて、その中に薬剤を入れるだけです。小便の場合、尿の跳ねが気になるので、着座した方がいいかもしれません。

帰りは新道を通ります。新道は熊見峠まで尾根歩きのコースとなっています。最初は木々に囲われていてあまり展望がありません。途中竜神の池への分岐路がありますが、行程がきついのでスキップします。途中日が差してきましたが、さすがにこの時間まで山頂で粘っていたら下山時刻がきついので、仕方なしです。

アップダウンを繰り返しつつ進んでいくと、やがてハイマツ帯に入ります。ここからの尾根歩きが気持ちいいですね。両側に広がる山の稜線を望みながら、天空をお散歩しているような心地になります。

尾根歩きを終えて熊見峠に出合ったら、1分間ほど休憩をして下山を再開します。しばらくはそれほど急坂ではない下り道が続きます。そのため比較的ペースアップがしやすいです。

途中右手に折れるところから、一気に急坂が始まります。ここは慎重に進まないと転倒しそうなので、ペースアップしづらいです。膝へのダメージも蓄積されます。だんだん日が落ちてきて、谷間へ下っていることもあり、周囲が暗くなり始めました。

17時30分、下二股まで戻ってきました。だんだん周囲が見えにくくなってきたので、ヘッドライトを点灯します。この先は暗くなったことと、急いでいたことで、写真はありません。真っ暗な中の渡渉は、道迷いのリスクが跳ね上がりますが、明るいうちに一度通った道なので、大きく迷うことはありませんでした。最後に沢筋から離れるところだけ、しばらく道を見つけられませんでした。ある程度先へ進んでしまうと、正しいルートが死角に入ってしまうんですよね。終点の制止ロープのおかげで、消去法で正しいルートを見つけられました。

あとはほぼ平坦な普通の登山道と林道です。ヒグマに気を付けながら、18時20分ごろ、下山完了しました。予定ペースの1時間弱オーバーで日没後の下山となり、怒られ案件です。

今回の山行データは、以下の通りです。

日程2024/09/16
距離12.79km
歩行時間6:52:53
経過時間7:02:56
高度上昇1,041m
平均心拍数132bpm

旧道から登って新道で下る、一般的なコースです。最初は谷間の沢を何度も渡渉しながら登ります。旧道では沢登り体験のような登り方を楽しめます。沢の近くをずっと登るので、涼しくて良いですね。上二股から歩いて馬の背まで着いたら、そこ広がるは高山の景色です。新道経由の帰り道も、熊見峠までは展望を楽しめる尾根歩きを満喫できます。熊見峠から下る際も、急坂の手前は展望も時折開けるので、楽しく下れます。急坂以降は谷へ下っていくので展望もなく、ひたすら修行区間です。このようにバラエティに富んだ行程を楽しめる山でした。

ただ設定されているコースタイムに結構バラつきがある印象でした。全体の時間もそうですが、谷間の沢歩きや沢登りの部分でバラつきが大きいですね。谷間の沢歩きに60分、沢登りに90分としているところもあれば、沢歩き40分、沢登り120分としているところもあり、一概に全体的なペース設定の違いとも言えない感じです。沢に関する部分は、個人差が大きいのでしょう。自分も初めての沢登りで慎重に登ったためか、旧道を登り終えた時でも息はまったく上がっていませんでした。なので技術と経験が伴えば、自ずとペースはもっと上がるのだと思います。

今回はそもそも出発が遅いと理解しつつ、6時間往復の可能性に賭けてしまったことが反省点であります。上二股あたりから巻くために若干ペースを上げたので、平均心拍数は普段より高めの値になっています。出発の遅れによる日没後下山は、戸隠山以来となりました。

記事に載せきれなかった写真は、こちらをご覧ください。

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