鹿島槍ヶ岳登山

2025年09月13日から14日にかけて、鹿島槍ヶ岳を登山してきました。あるぺん号で前日夜に竹橋を出発します。今回はプレミアムの3列シートです。談合坂SAと梓川SAで休憩を挟みつつ、4時すぎに扇沢に到着しました。

なるべく早く出発したいところですが、初めての山を真っ暗なうちから進むのはリスキーかな、と思い、薄明まで待つことにしました。その間に山行準備をしつつ朝食のおにぎり2個をいただきます。

5時手前ごろ出発しました。小雨がぱらついているので最初からレインウェアを着ておきます。扇沢駅から登山口までは10分ほど車道を歩きます。爺ヶ岳登山口駐車場が見えてきたら、扇沢橋を渡ったすぐ先に柏原新道登山口があります。

入口に登山相談員がいるのでこちらで登山届を提出しておきます。そしてここから登山道となります。柏原新道を緩やかに登っていきます。道は整備されていて急坂もなく歩きやすいです。その分距離がありますが適度な間隔で地名標が出てきて飽きさせません。新道なので古来の地名ではなく、最近に付けられた名前と思われ、その地点を形容するような地名が多いです。転落注意の崖区間や落石注意のガラ場など、注意を要する区間もありますが、難しい場所はありません。

柏原新道は樹林帯が続きますが、途中で左手が開けてきます。天気は良くないですが柏原新道自体はガスっておらず、下の方がガスっている様子を雲海として望むことが出来ます。

4時間弱歩くと種池山荘に出合います。ここから爺ヶ岳に向けて稜線歩きとなります。天気は良くないですがガスってはいないので、遠くまで気持ち良く見渡すことが出来ます。左前方には目指す頂である鹿島槍ヶ岳の姿も見えます。若干ガスが被っている部分はあるものの、この時間帯では十分に山容を楽しめました。

しばらくの間ゆっくりと登っていきます。やがて爺ヶ岳の南峰に出合います。山頂に向かうには短いながらも急坂を登らなくてはなりません。一方で巻き道もありますのでスルーすることも可能です。しかしせっかくなので登頂しておきました。山頂からは曇天の雲海を望みました。

一旦少し下っていき、再び登っていくと、今度は爺ヶ岳中峰に出合います。こちらも同様に巻き道がありますが、登っておきました。振り返ると先ほど登った南峰が見えます。加えて爺ヶ岳は北峰もあるのですが、こちらは山頂に続く登山道がないので登頂できません。

その後は一路冷池山荘を目指して緩やかに下っていきます。冷池山荘までは直線距離だと近いのですが、登山道は尾根沿いにぐるっと回らなくてはなりません。そのため近くに見えているのにも関わらず思った以上に時間が掛かります。

鹿島槍ヶ岳の方を見遣るとだいぶガスが掛かってきました。これは山頂からの展望は駄目だなあ、と覚悟を決めました。ちなみにこの尾根を挟んで右手が長野県、左手が富山県となっています。長野県側だけ見事に雲が掛かっている様子が印象的でした。ちょうど尾根を境に雲が生まれる感じですね。

緩やかに下り続けていくと、冷乗越の手前でやや斜度が増した下り坂になります。九十九折のザレ場を下りますが、それほど歩きにくくはありません。

冷乗越に着いたら小休止して鹿島槍ヶ岳方面を望みます。今日の昼から挑むか、明朝の天候回復に一縷の望みを繋ぐか、ぼんやりと考えます。しかしここは風が抜ける場所であり、雨風が少し強まってきたので、小休止を切り上げて先にある樹林帯まで下ります。

樹林帯の中を下りきった後、少し登っていくと、冷池山荘に到着です。こちらは”ひやしいけ”と読みます。天候不順を受けてキレット小屋泊予定の人たちが、宿泊先を冷池山荘に切り替えたりしていました。雨はそこそこ降っていて風も強くなる予報ですが、明日の朝の降水量は現在よりもエグい予報なので、意を決して進むことにしました。アタックザックに荷物を入れ換えて、メインザックは小屋の自炊室に置かせてもらいます。

山荘を出発してしばらく登っていくとテント場に出合います。それから緩やかな道をアップダウンしながら進みます。登山道脇には高山植物が咲いています。このあたりは鹿島槍ヶ岳に向かって尾根の右側であり、風を凌ぐことが出来ます。

途中で尾根の左側に移動となります。ここから風の吹きさらしとなりますので一気にきつくなります。途中に少しだけ山陰に隠れる区間があり、そこは途端に静穏となってまさにオアシスでした。ここまで一気に高度を上げてきたためか、頭がきゅうっとして高山病の兆候を感じます。すぐに深呼吸をして足を止めます。症状が進むと下山まで回復しないので極力進行させないようにします。

静穏区間を抜けると再び爆風となります。上から降る雨はレインウェアのフードでわりと凌げるのですが、横から吹き付ける雨には無力です。雨に打ち付けられて視界不良になって眼鏡を外したくなりますが、外したら外したで目の中に雨が入って痛いんですよね。高山病を意識してペースを調整しつつ進みます。足元には高山植物が幾らか咲き残ってくれていますが、なかなか楽しむ余裕がありません。

そして布引山に着きました。巻き道もありますが登頂しておきます。山頂からの景色は真っ白ですね。この先にあるはずの鹿島槍ヶ岳の姿は全く見えません。

コースタイムだと鹿島槍ヶ岳までここから1時間くらいなので気合いを入れて先へ進みます。布引山を過ぎると風の強さのギアが一段階上がった気がします。予報通り風速20メートルくらいですかね。強く吹くタイミングでは耐風姿勢を取らないと危ないです。爆風が吹く中ですが三連休ということもあって、たまに人に出会います。

鹿島槍ヶ岳直下に来ると岩が連なるガレ場になってきます。多少滑りやすいですがそれほど登りにくくはありません。鹿島槍ヶ岳はヘルメット推奨でしたので着用してきましたが、柏原新道から南峰に登る分には不要な感じでした。ただ一部岩稜帯もあるのであった方が安全だとは思います。ガレ場を九十九折に登っていくと山頂付近の低木が見えてきます。

そしてついに鹿島槍ヶ岳の山頂に着きました。山頂は不思議と風が穏やかです。とはいえ景色は真っ白でそれなりに寒いのであまり長居はしません。山頂標を撮影して、その後三角点も探したのですが、こちらは見つけられませんでした。なお鹿島槍ヶ岳は双耳峰であり、吊尾根を通って北峰に行けるのですが、天候を鑑みて行かない判断をしました。基本的に双耳峰は両座とも登頂してきたので心残りはありますが、南峰の方が若干標高が高く一般的に南峰を登頂の対象とするので良いでしょう。

帰りは同じルートを戻ります。雨と強風で身体が冷えますが、気温がまだ高かったので低体温症は大丈夫でした。もう少し気温が低いと危ないかと思います。

ガスと強風と雨の中を進む完全な修行状態でしたが、布引山をだいぶ下ったあたりで空から薄日が射し込み次第にガスが晴れてきました。一気に視界が開けて遠くの山々の稜線を望めます。朝から曇天でしたのでこれは気持ちよかったですね。今回の山行で唯一の晴れ間でした。

その後は再びガスが出始めてしまいます。ただ雨風は和らいできたので、だいぶ楽になりました。16時30分ごろ冷池山荘に到着です。高山病の症状によるペースダウンもあり、思ったより時間が掛かってしまいました。

アタックザックからの詰め替えや濡れた装備を整理していたら、あっという間に17時になって夕食の時間です。高山病の症状であまり食欲はないので、お代わりなしでいただきました。その後は山女日記コーナーを見たりしてまったりしつつ20時ごろ就寝しました。

2日目、4時30分ごろ起床します。夜中に何度も起きることはなかったので、そこまで高山病の症状はひどくないようです。ただ朝食はなかなか入りませんでした。ベンチのある室内デッキから外を見ると、予報通りかなりの土砂降りで風も強いです。時折雨風が弱くなる時もありますが、その後強烈な土砂降りになったりして緩急があります。予報では午後に向けて回復基調とのことなので、なるべく出発時間を遅らせようと思います。この日は下山のみなので時間に余裕はあるのです。いやあ、大変でしたが前日のうちに登頂しておいて良かったです。

8時ごろ、冷池山荘を出発します。雨はまだ降っていますが明け方に比べたらだいぶマシになっています。しかしガスは晴れないままで爺ヶ岳の姿を捉えることもできません。山荘から少し下った後は爺ヶ岳までは登り返しとなるので、粛々と登っていきます。尾根に出て吹きさらしになると雨風が堪えますね。ハイマツなどの低木がある区間は風が凌げて、防風林のありがたさを噛み締めます。

そんな中、爺ヶ岳の中峰あたりと歩いていると前方に動く影を発見しました。何と突然の雷鳥です。雪山以外で見るのは初めてです。しかも1羽ではなく6羽いました。若鳥の群れのようです。ヒヨヒヨヒヨといった鳴き声を上げつつ、登山道を歩いています。道を通るために近くへ寄っても、ある程度の距離は取ろうとするものの逃げ出すことはありません。悪天候の中の山行ですが、思わぬご褒美でした。

その後爺ヶ岳の南峰から種池山荘へ下る道で再び雷鳥に出合いました。今度は1羽で、オスのようです。モフモフの白い毛が付き始め、冬毛への生え替わり中のようです。

種池山荘まで戻ったら椅子に腰かけてカロリーメイトをささっといただきます。天気は回復基調とのことでしたが、まだ雨は変わらず降り続いています。

少しだけ休んだら柏原新道を下ります。雨で登山道にも水が流れ込んでいますが、排水の仕組みがあるので、終始水溜まりということはなくてありがたいです。道中は比較的短い間隔で地名標が現れるので、それらに往路の記憶が呼び起こされます。そして標高が下がって気温も上がってきたことから、カメラのレンズ等が曇り始めました。雨天山行の辛いところの1つです。

柏原新道は距離はあるものの歩きやすい道なので淡々と進んでいたのですが、平たい岩に接地した時足を滑らせて尻餅をついてしまいました。ここまで同じような岩でグリップが効いていたので油断しました。岩の上を水が流れていたことで摩擦力が下がったのだと思います。

12時20分ごろ、柏原新道登山口に下山し、そこから扇沢駅まで歩きます。地味に登りなので、足が重いです。扇沢駅に着いたらお弁当をいただきます。ちらし寿司弁当です。せっかくのお弁当を下山後に食べるのはもったいない感じがしますが、雨天だったことと昨今の同山域での熊出没頻度から屋外での食事が推奨されないという事情があります。

その後は路線バスで大湯温泉郷まで移動します。そして湯けむり屋敷薬師の湯で温泉に浸かりました。内湯と露天とサウナを満喫します。露天は大きめの湯船が2つあります。お湯は比較的熱めで長湯はしづらいです。随時縁に腰かけて身体を冷ましました。サウナは比較的低温で自分としては入りやすかったです。

その後は併設されている温泉博物館を見学します。無限にお湯が出てくるディスプレイの仕組みにはしばらく気づけませんでした。それからマッサージチェアで寛ぎます。15分200円の良心的価格です。

そして少しお腹が空いたので、食事処でカレーうどんをいただきます。今回は露天に浸かりたかったので新館だけ入りましたが、旧館も異なる泉質を味わえて良いらしいです。

16時30分ごろ、あるぺん号に乗って東京へ向かいます。道中では梓川SAと境川SAで休憩を挟んで、色々と買い食いをします。しかしこの日はいつにも増して渋滞がひどく、終電に間に合うかという状況になって少し焦りました。結局終電の数本前に何とか間に合いました。

今回の山行データは以下の通りです。

日程2025/09/13-2025/09/14
距離27.41km
歩行時間14:19:15
経過時間31:21:00
高度上昇2,309m
平均心拍数125bpm

柏原新道からのピストン山行です。一番オーソドックスなルートかと思います。三連休の天気予報は荒天と好天を行ったり来たりで、山行日が近づくにつれてやきもきさせられましたが、結局荒天の方に落ち着いてしまいました。一泊にするか二泊にするか悩みましたが、これまでの山行実績から一泊で大丈夫だろうと判断し、冷池山荘で一泊する計画としました。当初は2日目に鹿島槍ヶ岳へ登頂する計画でしたが、天気予報を踏まえて1日目に変更しました。そのため1日目は想定よりもハードな行程となりました。その分2日目は冷池山荘から下山するだけなので、だいぶ時間に余裕ができました。

しかし一気に3,000メートル近くまで標高を上げると、やはり高山病は避けがたいですね。一応それなりに注意してペースをコントロールしているつもりですが、完全に回避することは出来ないようです。時間に余裕があれば、前泊して高所順応しておくのが良いのでしょうね。

ちなみにマップで種池山荘あたりから左に伸びている直線は、位置の計測誤りによるものです。歩行速度に対して明らかな異常データなので、よしなに処理して欲しいです……

記事に載せきれなかった写真は、こちらをご覧ください。

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