戸隠山登山

2021年10月22日、戸隠山に登山してきました。戸隠山は険しい山として有名であり、信州山のグレーディングではDに相当します。自分がこれまで登ってきた山で、Dに相当する山はありません。蟻の塔渡りという有名な危険個所もあり、登山前夜は不安でドキドキしました。今回の登山で、前月購入したヘルメットを初使用です。

東京から朝一で行く都合上、戸隠奥社入口バス停に着いたのは、9時30分すぎ。この登り始めの遅さが、山行の終盤に響いてきます。

まずは大鳥居を抜けて参道を真っすぐ進みます。一部紅葉している木々も見られます。隋神門を抜けると、奥社杉並木となります。背の高い杉が沿道に居並ぶ光景は荘厳です。それから少しずつ上り道になり、軽く息があがります。20分ほど歩いて、九頭龍社、奥社に着きました。今回は特に安全登山および下山を祈願して参拝します。

それから九頭龍社の少し手前にある登山道入口に向かい、登山届を記入。参拝客の方と軽く会話をしつつ、登山を開始しました。

話に聞いていた通り、序盤から結構な急勾配が続きます。道も悪くはないが、良くもない、そんな感じです。時折真っ赤な紅葉が見えて、目を楽しませてくれます。途中そこそこな岩場が現れますが、まだ鎖は登場しません。

その代わりに雪が現れました。んー、これは想定外。道中のバスの車窓から周辺の山の冠雪を見て嫌な予感はしていましたが、この時期でもう積雪するんですね。夏山登山靴オンリーですが、まだ何とかなりそうな雪なので、行けるところまで行きます。

五十間長屋に着きました。ここで道を誤り、五十間長屋に沿って右側に進んでしまい、行き止まり。無駄に雪解け水の滝の下を通過してしまいました。

5分ほど歩くと百間長屋に出ました。この手前のあたりから鎖場が出てきます。長屋ですが、雨風を凌ぐのは難しそうですね。少し先に進むと西窟があります。崖上の祠への道は、本当に垂直なのでチャレンジしません。

さらに15分ほど進むと、天狗ノ露地の岩が現れましたが、こちらもスルーです。左右に切れ落ちていて、なかなか怖いと思います。

このあたりまで来ると、鎖場がジャンジャン登場します。すっかり忘れていたヘルメットを装着します。雪で靴底が濡れて、岩場で滑りやすくなっていることもあり、やや難易度が高めになっています。三点支持の基本に従い、鎖は緊急時に備えて手を掛けるだけにして登ります。簡単に登れるところもあれば、足元が滑ってしまい足場探しに苦労するところもあります。

個人的には、垂直、トラバース、垂直のルートになっているところが、高さもあって少し怖かったですね。トラバースのところで足場が急に下がるところがあるのですが、事前に重心を下げて移動できたのは、ボルダリングでの経験が活きたかもしれません。重心が高いまま移動すると、バランス崩しそうです。

幾つもの鎖場を越えていくと、胸突岩が現れます。事前に読んだレポートには、ここが大変と書かれているものもあれば、案外簡単と書かれているものもありました。自分の感想は後者です。傾斜は70度程度でかなりスラブですし、ホールドもスタンスもガバガバなので、かなり安心して登れます。むしろこれまでの鎖場より断然に登りやすいです。唯一ここが大変だと思うのは高度感です。ただ、70度でガバガバなので、落下というより滑落ですし、途中で止まれる気がするので、あまり恐怖感はありませんでした。もちろん実際に滑落したら、そう簡単に止まれないでしょうけど。

胸突岩を越えたら、ついに真打登場、蟻の塔渡りです。靴底の湿りを岩で拭ったら、いざ進みます。最初は、あれ?案外幅あるじゃん、と思うのですが、それは最初だけでした。鎖が現れて岩登りするところから本番です。

一応それなりに幅はあるのですが、不整地な岩場ですので、そんなに余裕はありません。上りが終わると、しばらくは凸凹した岩場を進みます。立って歩けそうな幅の箇所もありますが、岩場や突風でバランスを崩すのが怖いので、基本は四つん這い或いは低姿勢で進みます。

上りや平坦だけではなく、下りもあるのが、また大変なところです。岩場の幅も身体一つ分程度に細くなったりして、縁の地面に足を乗せなきゃいけない部分もあります。ちなみに巻き道もありますが、こちらはこちらで滑落しそうで怖いです。一旦下って再び上ってくるので、それなら蟻の塔渡りを進んだ方が良いかと感じました。

さて、そろそろ終盤です。ここまで四つん這い作戦で進んできましたが、ついに四つん這いも出来ないほど道幅が細くなりました。恐らくここが剣の刃渡りですね。手のひら一つしか置けません。一見馬乗りで進むしかないように思えますが、左側に足を置ける地面がありますので、そちらに両足を乗せて進みます。足を踏み外すことが怖いですが、そこは岩をしっかり掴まることで対処します。馬乗りの方が安全性が高そうに思えますが、現場の感覚としては馬乗りする気にはなれませんでした。

何とか無事に渡りきることが出来ました。達成感を胸に抱きつつ、来た道を振り返ります。しかしまだゴールではありません。さっそく次の鎖場が現れました。そこから10分くらい進むと、八方睨に着きます。

周囲が開けて良い景色ですが、休憩もそこそこに先へ進みます。15分ほど歩くと、戸隠山山頂に着きました。奥には高妻山が見えます。最初は戸隠山との縦走を考えましたが、両山のグレードと総距離を鑑みると、現在の自分のレベルでは無謀なので止めました。さて、こちらで大休止して、昼食をいただきます。

ここからは稜線歩き。上ったり下ったりを繰り返します。景色は眺望があったり、木々に囲われたりの繰り返し。途中に右側が垂直に切れ落ちている区間があり、蟻の塔渡りを過ぎても気の抜けない山行が続きます。そしてせっかくの稜線歩きですが、徐々にガスってきて太陽の光が遮られてしまいました。

雪はどんどん深くなっていきます。日の当たるところは比較的土の露出している部分が多いですが、日陰はがっつり積もっていて、シャーベット状になっています。上りは良いですが、下りはスリップが怖いので、慎重に進まざるを得ません。

そして1時間半ほどで、九頭龍山に着きました。真っ白で眺望なし。

上ったり下ったりの繰り返しでしたが、ようやく下り基調になってきました。滑りそうな登山道を慎重に下りていきます。1時間半ほどで一不動に着きました。

この時点で既に結構薄暗いです。真っ暗になる前の下山完了は厳しそうです。ヘルメットにヘッドライトを装着して、急ぎ足で下山道に向かいます。この標高でも雪が結構残っており、且つザレ場なので、下りにくいです。

やがて水の流れる大きな一枚岩である帯岩が登場します。鎖を伝いながら進みますが、だいぶ暗くなってきており、足元がよく見えないので、少し怖いです。小さな滝などもあり、明るい時間だったら楽しめたのでしょうが、今はそんな余裕はないです。

そんな感じでしばらくは沢下りが続きます。安全を優先して水の流れる岩に尻を着いて水浸しになりつつ、下っていきます。

そんな中、途中で道迷い。沢に沿って進んでいたら、どんどん勾配がきつくなり、木々が前を塞いできて、道迷いに気づきました。この時点で完全に真っ暗であり、周囲の様子はヘッドライトの灯りでは十分には分かりません。そこそこ進んでしまったので、どこで迷ったかも定かではありません。沢沿いで滑りやすい岩の上なので、進み方を間違えるとそのまま沢へ滑落しかねない状況。

この時はかなり焦りました。道が分からず、不安定な足場という状況なので、遭難の二文字が頭を過りました。大して道は外れていないはずですが、動けば動くほど迷い込む可能性もあるので次の一手が悩ましいです。とりあえずGPS時計で現在地を確認し、さらに山と高原の地図を使って広域情報と照合します。大洞沢の右岸に抜ける位置に来てないことから、明らかに登山道だと思われる箇所まで、上へ戻ることにしました。

そして見つけた「登山道」の看板。めっちゃ安心しました。沢沿いに歩くものだと思い込んでいましたが、ここは沢を渡らなくてはいけなかったのです。真っ暗だとこういう見逃しが怖いです。ヘッドライトでそれなりに見えるとは言え、入ってくる情報量はガタ落ちです。

その後は大洞沢を左右に渡りながら下っていきます。途中靴紐を結ぶためにグローブを外したら、片方が行方不明になってしまいました。周辺を結構探したのですが見つからず。何だか外した瞬間になくなったような感覚があり、神隠しにあったようで何だか不気味でした。

やがて登山道が大洞沢の右に抜けていくと、徐々に勾配が緩くなります。そしてほぼ平坦な森の中の道となりました。周囲はひたすら灰色の世界。やっぱり夜の山は不気味です。人の住む世界ではない感じがします。鉄板の橋を渡って5分ほど歩くと、戸隠牧場の入口に着きました。牧場に着いてほっと一安心でしたが、暗くて牧場内の道もよく分からず、右往左往してしまいました。ほんと明るいうちに下山しないと痛い目を見ますね。

今回の山行データは以下の通りです。雪などでゆっくり進んでいたせいか、移動時間が異常に短くなっているので、無効データとして項目から外しました。

距離12.11km
山行時間8:31:48
経過時間9:15:14
高度上昇969m
高度下降965m

戸隠神社奥社前から入り、戸隠山まで登ったら、九頭龍山を縦走し、一不動から戸隠牧場へ下りるルートです。戸隠山登山の一般的なルートかと思います。

終盤は下り行程ですが、暗くて慎重に進まざるを得なかったこともあり、だいぶ横長のグラフとなりました。

記事に載せきれなかった写真は、こちらをご覧ください。

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