二日目、5時すぎに起きて、朝の支度を済ませます。6時30分手前に、事前に渡されていた数珠を手に、本堂へ向かいます。参加する宿泊者は、自分を含めて2名でした。入口で首に掛けるようなもの(詳しくは失念)を受け取り、仏の前に正座します。本堂の中は薄暗く、ろうそくの灯りでほのかに照らされています。そしておもむろに始まる読経。凛とした寒さの中、厳かな時間が流れていきます。途中、お焼香する場面もあります。こうした非日常てきな空間に過ごすことで、神や仏がそこにいるかのごとく、身近に感じられた気がします。
その後、外を歩いて、円光堂に移動しました。ここには、法然上人が御本尊として祀られています。再び読経が始まります。途中、火鉢から大きく炎の柱が伸びる様子は、圧巻でした。一通りの儀式が完了すると、住職のお話を聞かせてもらえます。昔の話や季節の話など、興味深く聞き入りました。確かに森の木々の周りの雪が薄いのは、それらが生きてる熱なんですよねえ。
こうして朝のお勤めを終えたら、朝食をいただきます。昨晩と同じく、修行僧の方が用意してくれます。旅館で出る朝食のような感じですね。ごはんはおひつ一杯で来るので、満腹になれます。ニチアサタイムも、ちゃんと満喫しました。
9時20分ごろ、お寺を出ます。まず向かった先は、奥ノ院。一の橋を渡ると、背の高い杉の木々が連なります。一面の雪景色と、道の脇に居並ぶ墓石たち。ここが普段生活する場とは違う別世界であることを、否が応でも感じさせます。
弘法大師御廟を目指して、参道を進みます。道中には、様々な歴史上の人物のお墓があります。小田原北条家、徳川家、石田三成、豊臣秀吉、織田信長など、そうそうたる面々です。墓石の連なる道がわりと長く続くのですが、色とりどりの巾着を纏った可愛らしいお地蔵さまなどが、目を楽しませてくれます。
中盤くらいに差し掛かると、汗かき地蔵と姿見の井戸があります。姿見の井戸は、覗きこんで自分の姿が映らないと、3年以内に死んでしまうと言われています。恐る恐る覗いてみたら、無事に映ってひと安心。あと3年は生きられそうです。
それから覚ばん坂を登り、なおも続く参道を進みます。途中脇道に入って進むことも出来るので、隈なく回るのはかなりの時間がかかりそうです。密厳堂などを参拝しつつ、ようやく弘法大師御廟が見えてきました。この付近に豊臣秀吉と織田信長の墓があるのですが、織田信長の墓はどうにも見つけられませんでした。どこにあったのか、気になります。
さて、弘法大師御廟の前に来ると、ちょうど袈裟を纏った僧侶がお経を運ぶために、歩き始めました。するとカメラを構えた観光客が一斉に動き出して撮影。とくに知らなかったのですが、たまたまタイミングが良かったようです。玉川にかかる御廟橋より先は撮影禁止なので、橋の手前で立ち止まって撮影していました。
人々が掃けたら、御廟に向かいます。橋を渡ったあとの参道脇にも、ところどころお墓と思われる石塔が点在しています。参拝を済ませたあとは、読経の声を聴きながら、軽く周りを歩きます。
御廟橋を再び渡ると、今度は水行に向かう修行僧たちが、観光客に取り囲まれていました。雪も降り、水も凍てつく寒さの中、読経をして気合を入れています。そして、いざ玉川のなかへ入水します。一層激しさを増す読経の掛け声。入水は数分間くらいの長さで、身体が耐えられるギリギリの時間なのだと思います。
水行を見届けた後は、すっかり凍った手水舎に驚いたり、水向地蔵に水を掛けたりしました。
帰り道は、行きとは別の道を通ります。往路で見た歴史を感じさせるお墓に対して、こちらは近代的なお墓が並びます。通りに近い場所には、企業などによる大きなお墓が建っています。なかでも、しろあり駆除の会社による、しろありのお墓が面白かったですね。一方で、親鸞聖人のお墓もありました。また、英霊殿に立ち寄ったりもしました。
中の橋から奥ノ院を出たら、街の中心部に向かって歩きます。横を見遣ると、木の葉が氷で覆われて、その上に雪が積もっており、幻想的な光景です。てくてく歩いて向かう先は、金剛峰寺。途中、かるかや堂にも寄りたかったのですが、時間がないので、外から眺めました。軽く舞う雪のなかを歩きながら、宗教都市高野山の街並を楽しみます。観光客もそれなりにいますが、そんな騒々しい感じではなく、落ち着いた雰囲気を保っていて、素敵です。軒先にはつららが伸び、一層の寒さを感じさせます。
というわけで、冷えた身体を温めるべく、南海食堂へ。子供やおじいさんが案内の声をかけてくれます。注文したのは、鍋焼きうどん。ん~、この温かさに、身体が生き返りますねえ。ストーブもあってポカポカで、外へ出たくなくなってしまいました。
食後は、金剛峰寺へ向かい、主殿や鐘楼を眺めます。ここはそれほど広くないので、軽く見て回れます。続いて壇上伽藍へ。少し長い参道を歩いていくと、良くパンフレットなどで見かける大塔が見えてきました。赤と白が印象的な大きな二重の塔です。他にも、不動堂や金堂などを見て回りました。観光客の姿はほとんどなく、静寂が広がって心が落ち着きます。時折聞こえる鳥の囀りと、遠くに聞こえる読経の声が、耳に心地よいです。
壇上伽藍でしばらくのんびりとしたら、全面凍結した蓮池を眺めて、外へ出ました。向かった先は、霊宝館。仏像などに関する資料館です。館内は寒い箇所もあるからと言われて、受付でホッカイロをいただきました。実際に外気と同じくらいの室温の場所があって、かなり寒かったです。結局カイロは使わなかったけど。
展示の内容ですが、仏像や経文の展示など、仏教に関するさまざまな内容が見られて、興味深かったです。また、仏像についての基礎知識を丁寧に解説しているのも、勉強になりました。如来、菩薩、明王の違いや、阿弥陀、釈迦、大日、薬師といった如来の種類や背景など、漠然と名前を聞いたことがあるけど、詳しくは知らなかったですし。不動明王が険しい顔をしている理由なども。まあ、数か月経った現在、だいぶ知識は薄れてしまいましたが、それでも今後仏像を拝観する上で、一層楽しめるようになれたかなあ、と思います。
最後に向かった先は、大門。歩いて行ける距離なので、てくてくと進みます。途中、ファミリーマートを見かけました。高野山の雰囲気を壊さないように、だいぶ溶け込んでいます。そしてついにたどり着いた大門。名前の通り、かなり大きいですね。そして奥を見ると、気温を表示している電光掲示板がありました。現在の気温マイナス1.7度。そりゃあ寒いはずです。なんて思っていると、急に雪が激しくなってきて、軽く視界不良に。そろそろバスの時間なので、バス停に向かいました。
バスに乗って高野山駅へ戻ります。最初、観光列車である天空に乗ろうか迷いましたが、結局普通列車に乗って帰りました。ちょうど極楽橋駅には、天空とこうやが並んで停車していました。
続いての目的地は、奈良です。実はこの日の宿はまだ取っていません。というわけで、スマホからじゃらんで探して当日予約。無事、本日の宿を確保しました。ただ、迂闊だったのが、禁煙ルームか確認を忘れてしまったことです。とはいえ、宿を道中に決めるのは、初めての経験だったので、面白かったです。国内旅のときは、またこういうスタイルやってみようかなあ。
橋本駅で旅万葉に乗って、王寺駅へ。そこから大和路快速で奈良駅に向かいました。奈良は、およそ7年弱ぶりです。何となく見たことある景色に、懐かしさを感じます。こういうとき、やっぱり旅をしていて良かったなあ、と思いますね。今の旅は、10年後の自分へのプレゼントになるのかもしれません。
予約したスーパーホテルLOHASは駅に直結。チェックインは自動チェックイン機てきなものを使って行います。やり方はよく分からなかったので、教えてもらいながら、手続きしました。部屋に入ったら、ニチヨルタイムで寛ぎます。先に書いた通り喫煙ルームだったので、煙草の匂いが気になりますが、しばらくしたら慣れてくるので、我慢。
20時30分ごろ、夕食をとりにお出かけします。高野山に比べたらだいぶ暖かいのですが、それでも夜は思ったより寒いです。さて、当然奈良の郷土料理を食べたいので、スマホで調べた結果、やまと庵に向かいました。席数が多いので、ほぼ待つことなく入れました。さっそく郷土料理から、気になったものを選びます。金山寺みそ漬け豆腐 、きざみ奈良漬け、やまと豚の角煮、前のふたつはお酒の肴ですね。そしてお酒は、地酒である神韻をいただきます。郷土料理を肴に地酒をいただく、これが国内旅行の醍醐味ですね~。幸せです。その後も、旬野菜の天ぷらや串焼きなどをいただき、お酒も百楽門をいただきます。最後の締めは、焼き茶粥。満足満足。
22時ごろ、ホテルに戻ります。道中、中途半端に客引きがいて、鬱陶しいです。部屋に戻ったあとは、大浴場に行くつもりでしたが、お酒による眠気に勝てず、22時30分ごろ寝てしまいました。