デリーの旅~3日目

3日目、この日は自分の足でデリーの街を歩きます。昨日の市内観光で訪れていない場所を回ってみるつもりです。

昨日のお昼を食べすぎたせいか、お腹の調子がちょっと悪いです。トイレットペーパー付きのトイレだったのですが、途中で紙が尽きてしまいました。ふと脇を見ると、バケツと手桶が。これはもうやるしかない。そう決意して、インド式トイレに挑戦です。手桶で水をお尻に掛けるのですが、これがなかなか難しいです。思った通りの場所にあまり掛からず、そして掛けた水が肌を伝って前のほうに流れてきます。しかし、少しずつ水は掛かっていくので、意を決して左手を肛門にやり、ゴシゴシと洗います。一度やってしまうと、これがなかなか気持ちいいです。自分の手で直接触っているので、感触が分かりますし、変に肌を傷めません。

こうして、思わぬ形で実践することになったインド式トイレ。不浄の左手とする気持ちが、よく分かりました。確かに尻を拭いた手で、食事はしたくありません。

いざ、ホテルを出て、最初に目指す先は、カルロバーグ駅。一人歩きでは、どこの都市でもメトロが便利です。たくさんの人やリクシャで溢れる通りを進んでいると、30秒もしないうちに誰か話しかけてきました。鮮やかなブルーのワイシャツに反射率の高い大きめのサングラスをした兄ちゃんです。怪しさを絵に描いたような人です。無視しながら歩いていると、その最中に今度はリクシャからの客引きが始まり、忙しない。怪しい兄ちゃんはわりとしつこく、駅は2つあってこの先にある駅は違う駅だから正しい駅教えてやる、と言ってきます。さすがにこれくらいは調べてるので、嘘だと分かっていても、実際に自分の目で駅を見ていない状態だと、ちょっと不安になる心理があります。で、とりあえず付いていったら、どこからともなくリクシャドライバーが現れ観光商売を始めました。さっきの怪しい兄ちゃんは一仕事終えた感で、何か飲んでいます。これ見てイラッときて、一方的に話を打ち切り、駅に向かいました。

さっき通り過ぎたカルロバーグ駅。窓口の姉ちゃんから切符を買います。この時は気づかなかったのですが、どうも料金をちょろまかされた気がします。自分が誤った行先を告げた可能性もありますが。

メトロで移動し、アシュラムマルグ駅で降ります。ここからメインバザールに向かいます。駅の出口にはリクシャが待機していますが、それほど押しは強くありません。

どこがメインバザールの通りか良く分からないので適当に進んだのですが、合っていたみたいで、だんだん賑やかになっていきます。色んなお店があって、ゴチャゴチャした感じが楽しいですね。しかし思い切り観光地なので、絶えず客引きに合います。歩いていると一緒に横に付いてきて話を始めるタイプ。話を聞いていると、だいたい旅行会社関連の勧誘っぽいです。ある程度しつこいですが、一定時間粘ってそろそろ諦めてくれんかな、という感じになると、良い旅を、とか言って、わりかしあっさりと引き下がります。私のこと、インド人のこと信用できないの?とか、対日本人用っぽい文句も織り込んできて、研究されているなあ、と感心します。こういう時は相手のペースに乗らないように、信用云々じゃなくて一人で歩きたい、とか今日が帰国日、とか、言うようにしています。今日が帰国日は実際嘘じゃないですしねえ。

その他には、靴磨きの客引きが何回かありました。分からないようにわざと靴を汚してくる手口を聞いていたので、その辺はちょっと警戒していました。結局そのような被害には、合いませんでした。

ニューデリー駅まで歩いたら、元の駅まで戻ります。ニューデリー駅に行くには道路を渡る必要があるのですが、交通量がすごくて渡れる気がしなかったし、特に用事もないので行くのを止めました。

メインバザールからの帰り道、来た時の道を忘れてしまって、結局大通りのほうまで出てしまいました。メトロの高架があったので、駅の方向が分かって助かりました。というわけで、来たときとは反対側の出入り口から乗りました。ここにもリクシャがいましたが、何となくインド人を相手にしている感じでした。

再びメトロに乗るために、切符を購入します。窓口が混んでいたので、券売機で買おうとしましたが、投入したお金を受け付けてくれず、上手く買えません。しばらく離れて様子を伺っていると、親子らしき人が3回くらいトライしていましたが、結局上手く行かなかったようです。その後別の人がトライするも上手く行かなかったらしく、人がどんどん集まってきてちょっとした騒ぎになっていました。というわけで、素直に窓口に並びました。さすがデリーというか、皆わりときちんと並んでいます。

続いて向かった先は、チャンドニーチョウツクです。オールドデリーにあり、東京で言えば浅草に当たる下町です。

大きな通りの脇には、広い歩道スペースがあったり、そこにたくさんの露店が店を開いていたり、少し進むと商店街のアーケードがあったり、かと思えばたくさんの荷台が置かれていたりと、とにかくゴチャゴチャしてます。通りを歩いていると、柑橘系の美味しそうな匂いがしてきて、渇いた喉を刺激します。一方で長いこと掃除されていない公衆トイレのような臭いも、時折漂ってきます。ところどころに小さな公衆トイレがあるので、実際トイレの臭いなのでしょう。

あと、歩いていると目がしょぼしょぼしてきます。車の排気ガスや、香辛料などのスパイス成分が原因なのかなあ、と思っています。それほど強烈ではなく、少し気になるなあ、といったレベルです。

牛が闊歩している光景を見たかったのですが、なかなか見られませんね。数年前に野良牛対策が敷かれたとの話を聞いたので、それが功を奏したのでしょう。とは言え、全く見かけなかった人糞も、昨日のツアーの移動中にあったらしいので、少し奥に足を伸ばせば、いるのかもしれません。しばらく進むと、人がたくさんいる交差点に出ました。出店も出ており、何だかちょっとした広場のような雰囲気になっています。

ここを左に曲がってみました。大きなトラックが何台も停車しており、先ほどまでの大通りと比べて、生活感を感じる通りです。反対側を見遣ると、荷役に使われている牛がいました。これが今回のインド旅行で目にした唯一の牛だったと思います。結局野良牛はいませんでした。

牛はあまりいませんでしたが、山羊は時々見かけました。昨日の市内観光でも車窓から見えて、これからどこかへ売られに行くのだそうです。

来た道を再び戻り、駅へ着いたら、次はラジフチョーク駅に向かいます。ここは、真上にコンノートプレイスがあります。二つの路線が交差しているので、プラットホームも二階層になっています。日本の地下鉄と違うのは、天井が高く取られていて、向かい側のホームに橋を渡っていくところです。これは面白いなあ、と感じました。

さて、ここまで書いてきませんでしたが、デリーの地下鉄では、構内に入場する際に、手荷物検査があります。検査レーンは男性と女性で分かれており、手荷物をX線で検査した後は、金属探知機による身体検査が行われます。空港みたいな感じで、それなりにちゃんと検査されます。そこで問題がなければ、改札へ向かえるといった仕組みです。

改札機は、パリとかの地下鉄と同じ、回転バー方式です。海外の地下鉄はほとんどこの方式で、日本の改札機が珍しいんですかね。

コンノートプレイスでは、マクドナルドに行ってみたかったので、ぶらぶらと歩いてみます。円形状になっているから、適当に1周すれば見つかるだろう、と考えていましたが、なかなか見つかりません。白亜の柱や街路樹がが並ぶコンノートプレイスは、デリーの雑然とした街並みのなか、その整然さが際立っているのですが、でもどことなく整然としきらないところが、インドっぽいです。

そして噂通り、ここは旅行会社の客引きが多いですね。通りを歩いていると、どこからともなく現れて話し始めます。自分は実際今夜帰国してしまうので、断るのは楽ですね。はっきり意思を示せばしつこくありません。あとは、旅行会社のオフィス内から直接声掛けしてくるケースもあります。面倒くさいので、大概無視です。

マクドナルドは全然見つからず、外壁やらが白いせいかやたらと暑いし、客引きの相手をするのも面倒で疲れてきたので、ラジフチョーク駅に戻りました。地下は涼しくて良いです。

ともあれさすがにお腹が空いたので、駅の売店でマンゴージュースと軽食を買いました。サモサと揚げ春巻みたいなものを、選びました。サモサは程よくスパイシーで美味しかったのですが、揚げ春巻みたいなほうが、いまいち。脂っこくて重く、食べきるのがちょっと苦痛でした。前評判通り、インドで食べるチャイニーズフードは、日本人には合わない気がします。マンゴージュースは濃厚で、とても美味しいです。ただ余計に喉が渇きそう……

しばらく駅構内で電車を見送りつつ休憩します。それから向かった先は、ウッディヨーグバワン駅。ここは、国立博物館の最寄り駅になります。地上に上がると、これまでの観光地が嘘のように、人通りが少ないです。しかし、芝生や街路樹が整備されていて、きれいな街並みが広がっています。メインバザールとかの喧騒を忘れさせてくれる、とても落ち着いた雰囲気です。

ここから国立博物館に向かうのですが、少し距離がある上、いまいち道が分かりません。思った以上に周囲にランドマークがないので、どちらへ進んだらいいのか分からないのです。仕方ないので、勘で進んでみました。都会のなかの閑静な住宅街といった雰囲気です。自転車で走るおじさんや、何かで遊んでいる兄妹など、観光客がインドに求める生活感ではありませんが、リアルな生活感をそこから感じ取ることが出来ました。

で、結局進んでいた道は間違いでした。やけにくねくねした道なので、間違いに気づけました。この情報を元に方角を特定できたので、博物館のほうに軌道修正します。

今度進む道は、街路樹が常に木陰を作ってくれるので、涼しくて良いです。道端には露店やそこで寛いでいる人たち、土木作業をしている人たちなど、それぞれの生活をしている人たちがいます。こちらにはほとんど無関心です。客引きに声を掛けられる空間が、インドの中で特別な空間なんだろうなあ、とぼんやり感じました。

ちなみに、この通りには猿がたくさんいました。脇にある塀の上には、親子の猿がいたり、歩道の真ん中にも堂々と出てきます。もう少し寄って写真を撮ってみたかったのですが、あまり近づいてカメラに悪戯されても困るので、安全な距離を取っておきました。

10分ほど歩いて、国立博物館に到着です。館内に入る前には、駅と同様のセキュリティチェックがあります。チェックを済ませた後は、窓口でチケットを購入。自動的にカメラ持ち込みチケットになってたような気がします。

館内の展示物は、仏教やヒンズー教など、インドの多彩さを象徴するような多彩な内容になっています。小物の展示から、大型な展示物まで、バラエティ豊富。また、インド絵画も見られて、普段あまり目にする機会がないので、新鮮に映りました。もっとじっくりと見たかったですが、ここまでそれなりに歩いて疲れていることと、閉館時間が迫っていることで、若干駆け足になってしまいました。

トイレの近くにフリーの水が入手出来るらしい案内を見つけたので行ってみたら、タンクからチョロチョロと水が出てくる設備がありました。ペットボトルに給水して飲むスタイルのようです。2つあったけど片方は壊れているようで、欧米系の若い女の子が苦戦していました。自分が使っていたほうも出るには出ますが、かなりのチョロチョロ。無料なので文句を言うな、という感じですが、温くて味もいまいちでした。

さて、とりあえず行こうと思っていた場所は全て行ってしまいました。他にも行きたかった場所はありますが、帰りの時間があるので、今から遠出は出来ません。とりえあずホテルのある方面へ戻ることにしました。

ウッディヨーグバワン駅の窓口で切符を購入。とりあえず切符は買えましたが、細かい金で払わないからか、とても迷惑そうにされました。結局釣り銭は貰えなかった気がします。少額だったし、疲れていたし、料金体系を把握しきれてない部分もあったので、特に抗議はしませんでした。

ラジフチョーク駅で乗り換え。あまりに喉が渇いていたので、売店で水を買いました。12Rだったのですが、大きいお金で払おうとすると、もっと細かいの頼むと言われます。20Rでも駄目で、15Rでようやく受け取ってくれました。大きい単位のお金を嫌がるのは、偽札リスクなのでしょうか。それとも単に使いにくいからなのでしょうか。ちなみに、先ほどの駅員はちょっと感じ悪かったのですが、この売店のおじさんは良かったです。

カルロバーグ駅に着いたら、プラットホームの壁際に座って、ぼんやりとします。高架なので、徐々に日暮れていく街や空が見えて、旅の終わりの時間を噛みしめるのに、ちょうど良い場所です。あまり周りも気に掛けなくて済みますしね。

しばらくすると、だいぶ暗くなってきたので、そろそろホテルに戻ります。カーンロードは大勢の人でごった返して、進むのも一苦労。何だかハノイの旧市街を思い出します。たくさんの出店や行き交う人々。人、リクシャ、車、とにかく大量のクラクションが鳴り響きます。しかし、そこには一定の秩序が出来上がっており、現地の人に倣って歩いていれば、特に身の危険を感じることはありません。そんな夜の賑わいに沸くカーンロードを歩きながら、朝出かけるときに覚えておいたお店の看板を目印に、ホテルのある路地を見つけました。

夕食は、ホテルの近くにあるベジタリアン向けの有名なレストランであるスルケに行ってみたかったのですが、いまいちそれっぽいお店を見つけられず、断念。どうやら通りをひとつ間違えていたみたいです。あと、昼間コンノートプレイスで行きそびれたマクドを見つけましたが、こちらは何だか混んでそうな雰囲気なので、止めておきました。

というわけで、ホテルに帰って、迎えが来るまでロビーで待機。眠ったり、iPodで音楽を聴いたりして、時間を潰しました。夜便で帰国は時間をめいいっぱい使えて良いのですが、上手く調整しないと忙しなくなったり、持て余したりするのが、面倒です。

21時30分、空港まで送ってもらいます。さあ、これでインドの旅も終わりだ、と思っていたら、何やら帰国便の出発時刻がおかしい。1時30分の予定が、5時25分に遅延しています。1~2時間の遅延なら想定していましたが、4時間の遅延は想定外でした。う~ん、さらに待つことになるとは、何をして過ごそうか……

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