塩見岳登山

2024年10月04日から05日にかけて、塩見岳を登山してきました。今年は北アルプスと中央アルプスは登ったものの、南アルプスに登っていなかったので、9月上旬に計画しました。さすがに土曜は山小屋の予約が取れませんでしたが、公休日である10月04日金曜日の予約が取れて、且つ夜行バスも前日木曜夜発があったので、今回の山行計画が組み上がりました。

10月03日、竹橋から夜行バスに乗って出発します。天候不順なので、乗客は少ないです。最近こういうケースが多いですね。バスも山道も小屋も空いているので、悪いことばかりではないのですが。談合坂SAと諏訪湖SAで休憩を挟みつつ、3時30分すぎ、伊那大島駅前で下車します。ここからマルモタクシーに乗り換えて、鳥倉林道ゲートまで移動します。雨はもう少し先かな、と思っていたら、移動途中から雨音が大きくなり、収まる気配がありません。

4時45分くらいに鳥倉林道ゲートに到着しました。外はかなりの大雨です。早々にレインウェアに着替えてヘッデンを装着します。それから登山届を記入し、トイレに入ります。ここは雨を凌げるので、薄明が近くなるまで少し待機しました。

5時15分ごろ、出発します。ゲートを越えると、舗装された広い林道を歩きます。終盤は未舗装路になりますが、ここは大きな危険はないので、もっと暗いうちから出発して良かったかもしれません。途中雨が弱まるタイミングがあったので、朝食のおにぎりをいただきました。

鳥倉登山口に着きました。仮設トイレが4基ありますが、水を流すボタンが見当たらなかったような……結局使っていません。ここから山道になります。樹林帯を九十九折に登っていきます。普段高山に小屋泊すると高山病になることが多いので、今回は意識的にペースをゆったりにして登ることにしました。

しばらく登ると、道が左へ折れ曲がり、木々の密度が下がって少し明るくなります。時折急坂はありますが、基本的にはそれほどきつくありません。ただ、途中で妙に疲れてしまい、歩いている最中に眠くなるというこれまでに経験したことのない状態になりました。座って十分に休憩を取ったところ回復しました。未明のバスからタクシーへの乗り換えで、連続して体が休まっていた時間が少なかったせいかなあ。

ちなみに鳥倉登山口から三伏峠まで10段階で進捗表示があるので、良い目安になります。10分の3表記から10分ほど登ると、三伏峠まであと2時間の案内標が現れます。

この先は左側を谷にした道がしばらく続きます。勾配は緩やかな上りなので歩きやすいです。雨天ということもあり、登山道を囲む苔が瑞々しくて美しいです。木の階段や桟道があるので、滑らないよう足元に注意が必要です。

10分の6を越えて10分ほど歩くと、三伏峠から最後の水場となるほとけの清水に出合います。手持ちの南アルプスの天然水ペットボトルに、南アルプスの天然水を補給しました。三伏峠小屋の水場は、この時期は既に撤去されているそうです。

それから小さな滝などを見つつ、徐々に九十九折で標高を上げていきます。このあたりから桟道に代わり、網の鉄板が掛けられるようになりました。鉄板も滑るのは滑るので注意は必要ですが、桟道よりは歩きやすいのでありがたいです。

10分の9から25分ほど歩いて、三伏峠に着きました。三伏峠小屋は既に今シーズンの営業を終えているので、辺りはひっそりとしています。三伏峠は日本最高所の峠といわれており、それを表す看板などの写真を撮ります。ちなみに峠とは、尾根越えをする道の尾根と交差する地点のことを言います。峰などとは違い、道ありきなんですよね。それから小屋の軒先を借りて、レインウェアの下にフリースを着込みました。少し風も出てきましたし、標高が上がるにつれて冷えそうですしね。

準備を整えたら、塩見小屋を目指して先へ進みます。幕営地を左手に望みつつ少し下っていくと、荒川岳と塩見岳の分岐に出合いますので、左手に進んで塩見岳に向かいます。このあたりから雨による水溜まりが目立つようになってきました。

少しずつ登っていくと、次第に周囲がハイマツ帯になり、三伏山に登頂となります。木々がなくなり眺望が開けますが、生憎の天気なので真っ白です。そんな中、足元にはハナゴケがきれいなシルエットを作っていました。

その後は緩やかに下っていきます。道中では、黄色や赤に紅葉した木々を見られました。常緑樹も多いので一面の紅葉ではありませんが、十分に色づきを楽しめます。

下り終えた後は再び本谷山に向けて登りが始まります。途中にのぞき岩というスポットがあるのですが、ガスで何も見えません。きっと晴れていたら素晴らしい眺望をのぞけるのでしょうね。

三伏山から1時間超で本谷山に登頂しました。三角点もあります。左手が開けていますが、相変わらずガスで眺望はありません。ここから再び下っていきます。

下り終えるとしばらく樹林帯の中の平坦な道となります。その後再び上りが始まります。このピークは特に名前がないのですが、権右衛門山の少し南にあるピークです。

このピークを下っていくと、まもなく塩見小屋へ続く最後の上りが待っています。この道を探すのに少し戸惑いました。途中までテープはあるものの、その先がわかりません。先を見ると道らしきものが2箇所あるのですが、どちらも沢になっています。何となく水量の少ない右手側を選んで登りました。この選択は正解で良かったです。帰りに同じ個所を見たら、水量の多かった方は一切水がなく、その状態で見たら登山道には見えませんでした。雨天で沢となることで、なまじ道に見えてしまう点が注意すべきところだと感じました。

ここまで水平距離は長いものの、全体的に急坂のないコースでしたが、塩見小屋へ向かう尾根に出るまでは、急坂となります。それほど距離は長くないのですが、標高が高くて且つここまで長い距離を歩いているので、わりとしんどかったです。ザックに一眼カメラを入れているためか、普段よりザックの重さを感じて、これも疲労感に影響している気がします。少しでも疲れたな、と思ったら、迷わず休憩します。足を止めると、その時の息遣いから、自分が思っている以上に身体は疲れているんだな、と感じます。

尾根に出るとさすがに風が強いです。雨が顔に打ち付けて、テンションが下がります。小屋までの距離は僅かなはずですが、疲れからか足取りが重いです。ゆっくりと尾根道を登っていき、ようやく塩見小屋が見えてきました。

13時ごろ、塩見小屋にチェックインします。時間的には塩見岳のピークを目指せますし、その方が翌日の行程に余裕が出ます。しかし、今日は翌日予報に比べて風が強くてこの先樹林帯を抜ける山頂直下はさらに条件が厳しいだろうと考え、山頂アタックは翌朝としました。疲労感も考慮すると、それが最善だと思います。

やることがないので、ぼけ~っと過ごします。寝転がっていると冷気が底に溜まる分、結構寒いです。外は雨が降ったり止んだりですね。奇跡的に明日晴れてくれないかな~、と思いますが、そんな様相はありません。

トイレは小屋の外に携帯トイレブースがあります。男性小便器は別途ありますので、その場合は携帯トイレは不要です。携帯トイレは斜里岳で一度使いましたが、使ったことがない人は多少抵抗があるかもしれませんね。

17時に夕食となります。高山病の症状はなく、美味しくご飯をいただきます。悪天候ということもあり、この日の小屋泊は全員で6名です。カオナシのコスをされる方がいらっしゃいました。そういえばうっすらどこかのログでお見かけしたような記憶があるような、ないような。

食後は、横になっていたら19時すぎに寝落ちしたみたいです。22時ごろ目が覚めましたが、消灯した瞬間の記憶はありません。ん~、高山病に掛かっていないとぐっすり眠れますね。二度寝の後は2時すぎに目が覚めました。さすがに十分眠ったためか、この後はスムーズに眠りには入れず、うとうとしながら朝まで過ごしました。

2日目、5時ごろ起きて、朝食をいただき、ヘルメットとアタックザックの準備をします。チェックアウト時間である8時までに帰って来れれば小屋内にデポできますが、ギリギリになりそうなのでザックカバーを着けて小屋外へデポしました。

6時すぎに塩見岳山頂を目指して小屋を出発します。尾根道を歩いて少し下ると、塩見岳山頂直下の岩山が姿を現します。最初は岩交じりのザレ場を九十九折に登っていきます。次第に岩が主体になっていき、岩登りをするシーンが増えてきます。時々どうやって登るのかよく分からない箇所もあり、正しいのか分からない形で強硬突破しました。

ルートはペンキで案内されていますが、1箇所見逃してしまい、誤って岩稜帯の上に登ってしまいました。やけに滑りやすい岩でおかしいなあ、と思っていたのですが。下の方を見るとルートがあったので、そのまま直進して下りました。岩横の地面を足掛かりに何とか下りられました。岩面だけだと濡れていることもあり、滑落しそうでした。

その後は幾つも現れる鎖場を登っていきます。バランスを崩したら危ない箇所もあり、鎖なしでいけそうな部分も鎖のあるところは基本的に鎖に手を添えて登ります。ルート上の岩はそこまで滑りやすい岩はなかったと思いますが、剱岳の経験を活かして荷重や足場の傾斜に注意を払って登りました。

鎖場を越えると、緩やかなザレ場の道になってきます。ここまで来たら、間もなく塩見岳西峰に到着です。標高3,047メートルで、三角点があります。しかし登頂目前になって、急に雨足が強くなってしまいました。

ここから1分くらい歩いていくと、奥に塩見岳東峰があります。標高3,052メートルでこちらが最高峰となります。晴れていたら絶景の予感がしますが、生憎のガスで真っ白です。小屋泊していた方々と少し歓談し、その後下山します。

往路と同じく復路でも1箇所案内を見落として、ルート外を下ってしまいました。ザレ場の急坂なので、整備されていないルート外だと少し動いただけで落石を起こしてしまって危ないです。誰もいなくて良かったです。

山頂からの下山途中、小屋方向を見下ろすと、急にガスが切れ始めました。思わずアタックザックの中からミラーレス一眼を取り出して撮影します。しばらくすると再びガスってしまいました。

小屋に戻ったら、アタックザックの荷物をメインザックに移します。小屋の方が傘を掛けてくれていたので、雨の影響を幾分低減できました。雨天時のザック開閉時に登山用の傘があると便利かなー、とぼんやり考えたのですが、ネット検索してもあまりそのような意見は見かけませんでした。

塩見小屋からは往路と同じルートをピストン下山です。タクシーの予定時刻を考えると、あまり時間に余裕がなく、標準コースタイムだと8時間35分のところを、7時間30分で巻く必要があります。というわけで、バテない程度にペースをキープしつつ、淡々と進みます。水平距離は長いですが、勾配がきつい箇所は少ないので、体力次第で比較的巻きやすいかと思います。尾根のあたりは特に紅葉がきれいなので、本当はゆっくり写真を撮りたいんですけどね。

朝からしばらく雨が続いていましたが、10時手前に雨が上がって、薄日が見えるような時間帯もありました。ただその後再び曇天となり、時折雨が降ったりしました。レインウェアは脱がないで正解です。ガスは完全に晴れることはありませんでしたが、前日に比べて遠くの山肌まで見渡せる時間帯がありました。

三伏峠に着いた時点で、目標としていた時間には間に合いそうなので、若干ペースを落とします。勾配が緩いとはいえ、長いこと下っていると膝へのダメージも蓄積されてきますし、疲れも溜まってきます。そのせいもあってか、1箇所だけ木に足を滑らせて転んでしまいました。転び方が良かったため、ノーダメージで済みました。

天気はこのまま回復傾向かと思いきや、再びガスってその後本降りの雨となりました。ところで三伏峠の10分割表示は、下りの時もありがたいですね。登山ルートの最初の区間は、どうも下りの時ほど長く感じやすいので、目安があるのは助かりました。途中、10分の2表記だけ見過ごしてしまったようです。

12時30分すぎ、鳥倉登山口まで戻ってきました。ここでFenix 5Xの充電をしつつ、持ってきた惣菜パンで昼食をいただきます。その後は林道を歩いて、鳥倉林道ゲートへ向かいます。しかし、もうすぐゴールだというのに、ここに来てこれまでにない大雨が降り始めました。んー、最後までレインウェアを脱がないで良かったです。駆け足を交えながら、何とか時間前に着きました。

13時30分すぎ、マルモタクシーにてまつかわ温泉清流苑まで移動します。温泉の入浴券をサービスいただきました。空を見遣ると、雲の隙間から青空と日差しが覗いたと思ったら、再び曇天になったり、山間の天気は目まぐるしいです。なお、13時30分に出発した場合、清流苑には14時30分に着くので、バスの出発時刻までデフォルトで3時間のバッファがあります。

清流苑に着いたら、ザックを外の荷棚に置いて、さっそく温泉に入ります。温泉では、薬湯(秋桜)、ジェット湯、絹の湯、ラジウムイオン鉱物泉、展望風呂、座湯足湯、露天風呂、桶風呂、ハーブサウナと、様々に楽しみました。登山で疲れた身体に染み渡りますね。桶風呂の木の感触も優しくて良いです。お湯はやや熱めなので、しばらく浸かったら、屋外の岩のベンチに腰かけて湯冷めするのが気持ちいいです。泉質は単純アルカリ泉です。温泉を集中して味わうなら展望風呂が良いかな、と思います。

湯上り後は休憩処にて、コーヒー牛乳をいただきます。その後はいつも通りマッサージチェアを堪能します。そしてさらにコカコーラゼロで下山の儀をこなしました。

しばらくまったりした後は、レストラン梨花に向かい、遅い昼食をいただきます。17時まで待てば喫茶タイムからディナータイムになりますが、それまで待つとバスの時刻が微妙なので、喫茶メニューである山菜そばと五平餅をいただきました。

バスの時刻が近づいてきたので、そろそろ発つ準備をします。温泉でさっぱりしたのに、再び濡れた靴下を履いて濡れた登山靴を履く苦痛たるや……。

17時30分、バスに乗車した後は、一路新宿へ向かいます。途中諏訪湖SAと談合坂SAで休憩を挟みます。諏訪湖SAでは、信州限定のじゃがりこ贅沢だし味を買いました。優しいおだしの味がして美味です。土曜日でしたが、天候不順のためか渋滞にハマることもなく、予定時刻30分前倒しの21時ごろ新宿駅西口に到着しました。

今回の山行データは以下の通りです。

日程2024/10/04-2024/10/05
距離30.92km
歩行時間14:17:12
経過時間32:06:25
高度上昇2,089m
平均心拍数97bpm

南アルプスの奥深い場所に位置する塩見岳なので、獲得標高もさることながら、水平距離が長いです。三伏峠までは緩やかに登っていき、三伏峠から塩見小屋まではピークを3つ越える縦走路となります。そして山頂直下は威風堂々たる岩山です。山頂直下は岩稜帯ですが、登山道自体は地面が露出したところや接地した岩の上を進むので、岩に岩が重なったような岩稜帯歩きは基本的にありません。ただ岩だらけではあるので、ヘルメット着用が安心です。

今回は生憎の雨天ということで、混雑という点では諸々空いていて快適でしたが、その分展望はなく登山道も水浸しでした。天気は残念でしたが、時期的に紅葉が進んでおり、赤や黄色に染まった木々の様子を楽しめました。2日目にガスが晴れて見通しが効いたタイミングでは、山肌が黄色に染まっているのを確認できました。

高度グラフは、塩見岳のピークを踏んだ後の下山行程が、登山行程に比べてだいぶ短いです。上りと下りによる差もありますが、往路は高山病警戒で意図的にペースを落としていることと、復路はタクシーの時刻の都合で意図的にペースを上げていることが、影響しています。

最近雨天山行が多く、今回も山行中はほぼ雨に降られていましたが、ザックカバーを着けていてもザックの中は思いのほか浸水することを実感しました。特に替えの靴下やインナーシーツなど、濡れて欲しくないものが濡れてしまったのは困りました。ということで、大きめの防水スタッフバッグを購入予定です。

なお、今回の山行写真はほとんどスマホで撮影しています。普段はミラーレス一眼を使っていますが、本降りの雨天山行だと防滴カメラでは故障リスクを無視できないですし、レンズ曇りや結露対策も面倒だからです。とはいえ、スマホカメラの画質は悪くないですが、一方で満足いかないことも多く、雨天時はTG-5の再登壇もありかな、と考えています。昔はTG-5を山行写真用に使っていました。防滴ではなく防水ですし、耐衝撃性などを考えても俄然山行向けといえます。

記事に載せきれなかった写真は、こちらをご覧ください。

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